天下りの何が悪いのか? 弊害と問題点は? わかりやすく解説

ビルと青空

「また官僚が天下りをしている、けしからんっ!」「まったく、いつになったら天下りはなくなるんだ」

テレビを見つつ、そんな憤りを覚えている方は大勢いらっしゃるだろう。あなたも、一度や二度、内心で気炎を揚げたことがあるかもしれない。

しかし、天下りの何が悪いのか、ご存知だろうか? この記事では、テレビではいちいち説明してくれない天下りの悪さについて、解説する。

そもそも天下りとは何か?

まずはここだろう。天下りって、そもそも何なのか? 元来の言葉の意味でいえば、神様が天から地上の人間界に降りてくることだ。神様が天から降ってくる。だから、天下り。

これになぞらえ、中央省庁の官僚が民間企業や関連団体に再就職することを指し、天下りと言っている。偉い官僚様が財務省や厚労省、文科省といった役所から、下々の団体や企業に降りてくる。だから、天下り。

天下りするおじさん

ちなみに、神様に例えるほど官僚はえらいもんなのかと思われるだろうが、中央省庁というのは法律によって大きな権限を与えられている。薬品や学校設立の許認可、公共事業の発注など。そこで民間企業・団体の運命を決めるのは省庁なので、やはり「偉い」のである。

もちろん、権限を持っていて偉いのは厳密には省庁という組織であって、官僚個人ではない。

なぜ天下りが行われるのか?

じゃあなぜ官僚たちは、わざわざ自分が勤めていた立派なお役所を辞めて他の会社や団体に再就職を、つまり、天下りをするのだろうか。

この原因は、官僚の早期退職という習慣にある。公務員というと定年までずっと働いているようなイメージだが、キャリア官僚は別で、定年前にどんどん職場を去っていくのだ。

なぜかといえば、就職した官僚の数に比べて、上の方のポスト(役職)というのは非常に限られているから。たとえば、平成28年に財務省に採用された人は23人だ。だいたい、毎年20人くらい入っている。

だが一方、トップの財務省事務次官は、もちろん一人しかいない。しかも、同じ人が2、3年やる場合もある。

とすると、もう明らかだが、財務省に入ったエリートといえど、トップの事務次官にまで上り詰められるのは40人に一人くらいしかいないのだ。

事務次官だけじゃない。その下のポストも上に行けば行くほど数は限られ、その席に座れる人は限られる。このイス取りゲームからこぼれ落ちた人はどうなるかというと、ある日上司からポンと肩を叩かれ、「〇〇会社へ行ってくれ」と通告されるわけだ。

「肩たたき」はキャリア官僚の挫折

ある日ポンと肩を叩かれ、他の企業・団体へ行ってくれと言われることを「肩たたき」という。

東大や京大を出て、難関の公務員試験を突破し、立派な役所に入った。そこで出世をめざし、20代30代、さらには40代と人生の大半を捧げてきた。が、50歳前後、突如、そんな戦力外通告がなされる。

天下りというと、なんだか「甘い汁を吸う」みたいな語感もあるが、実はその発端となる肩たたきは壮大な挫折でもあるのだ。

ちなみに、そんな肩たたきなどせず、普通の定年まで働けばいいじゃないかとも思うだろう。だが、出世の道からはずれた年配の官僚を外へ出すことによって役所内の仕事がやりやすくなったり組織の若返りができたりするので、メリットもある。このメリットと、以下に述べる弊害とが天秤にのせられた状態で、今も揺れているのが現状だ。

天下りの何が悪いのか?

疑問女子

はて、出世レースに敗れた官僚が、民間企業や関連団体に再就職する。これが、天下りの飾らざる実態、シンプルな姿だ。だったら、別に何も悪いことはないはず。なんなら、ちょっと気の毒なくらいだろう。そう思うだろう。

けれど、話はそう単純ではない。天下りにはこんな問題点がある。

  • 中央省庁と企業・団体が癒着し、不正が行われる
  • 天下った人に不当に多額な給料・退職金が支払われる

ひとつずつ見ていこう。

1)中央省庁と企業・団体の癒着

まずはこれだ。中央省庁と民間企業・団体は分野ごとに密接に関わっている。厚生労働省と製薬会社、文部科学省と大学、国土交通省と建設会社というふうに。

それぞれ、企業や団体が「許可をくれ!」とお願いし、省庁が「いいよ」「だめだよ」と判断する仕組みになっている。民間の側は、国に許認可権を握られており、基本的に弱い立場にある。

そこで、天下りヒーローの登場だ。

天下りマン

人脈と癒着のパワーでなんでも融通してくれる! スーパーヒーロー・アマクダリマン!

たとえば、もともと国土交通省にいたAさんを建設会社で雇う。年収1500万、個室と秘書とハイヤーを付けて、出勤は週に3日でオーケー。しかも、出勤してもただYahoo!ニュースを読んでコーヒーを飲んでいればいいだけの簡単なお仕事。

そんな待遇で天下りAさんを受け入れ、いざ国の工事を受注するときに、省庁に掛け合ってもらうのだ。

「うちの再就職先の〇〇建設会社はいい会社だから、今度の工事はやらせてくれよ」

と、もといた古巣の力のある人にそう働きかける。工事は見事、この会社が請け負うことになる。よかったよかった。

……なわけがない。天下りの元官僚を厚遇した会社が他より有利に扱われるということは、本来公平であるはずの競争でズルが行われるということ。もっと質のいい建設会社が損をしてしまうということだ。

これはよくない。

というわけで、中央省庁と特定の企業・団体が仲よくなって、競争に不正な要素が持ち込まれるというのは、許してはいけないことなのだ。

これが、天下りが悪い、いちばんの理由である。

2)不当に高額な給料・退職金

先もチラッと書いたが、天下りした元官僚には多額の給料・退職金が支払われることが多い。というか、安月給だったら「天下り」とは言われないだろう。

この、不当に高い給料・退職金も、天下りが悪い原因だ。

でも、再就職したら公務員じゃなくて民間企業の社員とか団体職員になるわけでしょう? それがいけないの?

それが、いけないのだ。

天下りするということは、国からの許可だとか公共事業の発注だとかいう形で何かしら公的な利益を得るということ。そのサポートをしてあげるということ。つまり、天下りした先の会社・団体の利益というのは、国からもたらされる

その天下りの人の給料・退職金は、元を正せば税金なのだ。

税金を横領する人

直接税金をネコババしているわけではないが、自分の元の立場を利用して特定の会社や団体に利益を与えて、その見返りとして高い給料・退職金をもらう。これはもはや、間接的な横領と言っていい。

だから、天下りは悪いのだ。

いい天下りもある?

ところで、こんな疑問もあるかもしれない。悪い天下りだけでなく、いい天下りもあるんじゃないか、と。口利きだけして何もしなければだめだが、ちゃんと再就職して働いていればいいではないか、と。

たしか、そういう例もあるようだ。

もともと中央省庁の官僚は優秀だ。何十年も働いてきて、知識や経験も豊富。それを活かして民間企業でバリバリ働いているという立派な人もいる。いるはずだ。

そういう場合、外形上は天下りであっても特に問題はないし、むしろいいことだ。ちゃんと働いて高い給料を得るなら、全然悪いことじゃない。

だが、悪い天下りとこういういい天下りを区別するのは非常に難しい。口利きというのも、どこまでを不正と捉えるかは曖昧だ。働き具合も、どこまでやればいいという線引きはできないだろう。

官僚は出世が命?

会社員もそうかもしれないが、官僚にとっては出世が何より大事。どこのポストまで上り詰められるかというのが人生の一大事のようだ。

私は数年前に公務員試験を受けていたのだが、法務局で面接をしたとき、こう言われた。

面接官

「うちはね、毎年の採用数と局長のポストの数が同じだから、入ったらみんな局長になれるんですよ!」

どういうことかというと、出先機関である法務局は全国にたくさんあって、局長のポストが多い。だから、局長の席が限られている中央の法務省などと違って、局長クラスまではみんなが出世できるということだ。

そんなことを言われて、私は「へー、そうなんだ」と思っていた。

公務員志望だったのに出世には興味がなく、就職したとしても長く続ける気はなかったので、面接官からしたらガッカリな反応だっただろう。

だから、不採用だったのかな。

まとめ

天下りの何が悪いのかについて、なるべくわかりやすく解説してみた。

ポイントは2つだ。

  1. 中央省庁と企業・団体の口利きをすることで競争の公平性を損なう
  2. もともとは税金のお金を不当の高い給料・退職金として受け取る

要は、天下りというのは企業・団体にズルをさせるもので、天下りをした人もズルして儲けているということである。天下りはズルい。だから悪いのだ。

だが、現状なかなか天下りはなくなっていない。なぜなら、規制をしてるのも公務員だから。泥棒に泥棒を捕まえろと言っても、それは難しい話なのだ。

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2017.07.24