全店舗閉店の衝撃! 北関東の激安コンビニ・セーブオンへの鎮魂歌

セーブオンのロゴ

群馬県民にとって、セーブオンはポピュラーなものだ。山と言えば赤城山、カルタと言えば上毛カルタ、コンビニと言えばセーブオン。そのくらい、当たり前の存在として親しまれている。

ところが、そのセーブオンが、ほどなく消えようとしている。

すでに埼玉では大部分のセーブオンがなくなり、次いで、本拠地である群馬をも含めて、セーブオンはこの世から消え去ろうとしている。この記事はそんなセーブオンのことを後世へ伝えるための記録である。

セーブオンとはどんなコンビニか?

セーブオンは群馬県前橋市に本社を置くコンビニチェーンである。出店地域は群馬県、新潟県、栃木県、千葉県。埼玉県にもあったが、2017年5月に全店舗が閉店した。創業は1983年、株式会社セーブオンとしての設立は翌年1984年。ワークマンやカインズホームを束ねるベイシアグループに属している。

……と、こんなWikipediaに載っている情報は別にいいだろう。大事なのは、地域でどのように認識されていたか、どんなイメージの店だったかだ。データは放っておいても残る。ここでは、放って置いたら忘れ去られそうな事柄を記そう。

セーブオンの店舗

セーブオンは、こんなコンビニだった。

安さが売り

まずはこのイメージ。セーブオンには安いものがたくさんある。豆腐、コンニャク、そば、うどんといった食料品、ぷにもっちぃやシュークリーム、プリンなどのスイーツ。それから、セーブオンの代名詞ともいえる安い安いアイス。一時期はアイスが一個39円だった。ドーナツは60円、黄金という発泡酒は100円。セブニレブンやファミマにはここまで安いものはないだろう。

セーブオンでアルバイトをしていたとき、親子連れがカゴ一杯に品物を入れてレジに来たのだが、小さい子供が「お金足りる?」と心配そうに父親に尋ねていたことがあった。が、その父親は一言、「セーブオンだから大丈夫だよ」。

つまり、セーブオンは安いというのは、北関東のコモンセンスとして定着していたのだ。

セーブオンのアイス

mini seleバニラカップとアーモンドチョコが64円、ザクザクチョコモナカが60円、他はすべて48円である。とにかく安い。

毎日が半額セール

これも「安い」の一形態だが、毎日食料品が半額になるのはありがたいことだ。私がバイトをしていたときは午後5時におにぎりやサンドイッチ、寿司の一部が半額になり、夜9時におにぎりと弁当の大部分、さらにスイーツとパンと和菓子などを半額にしていた。

最近はセブンイレブンなどの大手でも多少半額になっていたりするが、コンビニ本部としては、半額セールはして欲しくないようだ。長い間、フランチャイズのオーナーに対し、半額にすることは禁止していたようである。このへんの事情はフランチャイズのロイヤリティの計算方法が絡んでいて厄介なので、三宮貞雄著『コンビニ店長の残酷日記』(小学館新書)を読んで欲しい。

さて、半額セールだとかなりありがたいので、毎日半額の時間になると、半額目当ての常連がよく店を訪れていた。そして、おにぎりや弁当やパンをたんまりカゴ一杯に買い込んでいた。「ただでさえ賞味期限が近いのに、こんなに食べきれるのか?」と、よくバーコードを読みながら不思議に思っていたものだ。

あの頃よく店に来ていた中年の夫婦、一人暮らしらしき陽気な爺さん、あの人たちはいまどこで買い物をしているのだろうか?

仕事が楽

これはバイト目線だが、仕事が楽だった。私が最初にセーブオンでバイトをしたのは、高校2年生だった2002年あたり。初めてのバイトだったが、すぐに仕事に慣れ、特段問題なく1年間働いた。そのあと、紆余曲折を経てまた2016年に1年間バイトをしたのだが、このときも楽。客が店内にゼロということも多く、多くても2組3組という状態だった。

仕事が楽な理由は客の少なさもさることながら、仕事自体が他のコンビニチェーンより少ないということもあっただろう。ATMがなく、ロッピーのようなチケットの発券機もなかった。クオカードも取り扱いできなかった。そうそう、ポイントカードのたぐいもないので、いちいち「Tカードお持ちですか?」と聞かなくていいのもよかった。

しかも、時給自体は他のコンビニと比べて低くはなく、楽にバイトがしたいならなかなか狙い目だったというわけだ。

しかし一点、コーヒーのマシンだけはクセ者であった。1日に部品洗浄を含めた全体の掃除を1回、中のチューブなどを洗浄する掃除が4,5回必要で、しかもそれがやりづらい。しょっちゅう故障する。あのマシンの採用を決めたセーブオン社員には今だに文句を言ってやりたい気持ちでいっぱいだ。

独特のホットスナック

コンビニのレジ横にはどこも揚げ物や串が置いてある。アメリカンドッグ、ビッグフランク、ハッシュドポテト、からあげなどなど。セーブオンはここのメニューが独特なのだ。

私が一時期毎日のように食べていたのは豚タン(ぶたたん)である。豚のタンを串焼きにしたものだ。コリコリとした軟骨と脂、歯ごたえのある肉がうまかった。ペッパー、塩七味、みその3つの味があり、どれもうまかった。1本150円くらいだったろうか。

また、店舗によってはみそポテトなんてのがあった。秩父あたりの店舗にあって食べたが、これもうまかった。揚げたじゃがいもにみそダレがかかっているのだ。これは秩父名物らしいので、セーブオンが埼玉から撤退した今も、食べることはできるだろう。

さらに、群馬県に近い方の店舗では、店内で焼きまんじゅうを売っているところもあった。これもそこそこ人気があって売れていた。

その他、から揚げ棒やコロッケもおおむね美味なものが多かった。ホットスナックはなぜだか他の大手に比べても遜色がなかった。

三代目茂蔵豆腐

これはたぶん2016年からだが、セーブオンで茂蔵豆腐というものを取り扱うようになった。……いや、よく見たら「豆腐」ではなく「豆富」になっている。いいネーミングセンスだ。

すべての店舗ではないが、一部、この豆腐を販売しており、他にも厚揚げやら何やらがあった。けっこうおいしい。好評なようである。

セーブオンの豆腐

2017年に埼玉の店舗が消滅、このあとは……

すでにセーブオンが全店消えたかのような書き方をしているが、2017年7月現在、閉店に至ったのは富山・長野・茨城・福島・山形・埼玉の店舗である。まだ他は残っている。が、順次閉店するかローソンへと転換していく。

2017年5月23日、私がバイトをしていた店舗を含め、埼玉のセーブオンが全店消滅。まだ残っている群馬・新潟・栃木・千葉の店舗も2018年中にはすべて閉店となる。株式会社セーブオンはローソンのメガフランチャイジーとなり、セーブオン独特の安いアイスやスイーツ、プライベートブランドの品などはすべてなくなってしまう。

閉店したセーブオン

オープンからわずか半年ほどで閉店したセーブオン。駐車場の舗装もまだ真新しい。

しかしこれも時代の趨勢。弱小のコンビニチェーンはセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンのいずれかに吸収されていくのだろう。

ただし、この三つ巴の状況さえ、いつまで続くかは分からない。静かに、しかし確実に聞こえてくるのはAmazonという巨人の足音だ。書店に始まり、電気店、百貨店と、小売り店はAmazonに浸食されつつある。

ひょっとしたらいつの日か、セブンイレブンの鎮魂歌が奏でられる日も来るのかもしれない。