イラネッチケー裁判でNHKはぶっ壊れるのか? 魔法の筒の威力とは……

古いテレビ

イラネッチケーというものをご存知だろうか? テレビに接続することでNHKを映らなくさせる「魔法の筒」だ。あるいは、日本放送協会(NHK)という組織をぶっ壊すポテンシャルを秘めた「小さな爆弾」と言ってもいい。

このイラネッチケーを巡って、いくつかの裁判が進行中なのである。そして、その裁判の行方によっては、NHKが解体へと近づく可能性がある。あの巨大組織、だれもが知っている放送局、NHKが……。

いったいイラネッチケーとは何なのか。なぜ裁判になっているのか。裁判での争点は何か。そんなことをここではお伝えしたい。

イラネッチケーとは何か

概要はさきほど書いた通り、NHKを受信できなくする道具である。「NHKなんか要らない」、だからイラネッチケーという。片手で握れば隠れるほどの、小さな銀色の部品である。


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通常テレビというのはアンテナ端子にアンテナケーブルを接続することで映るようになる。NHKから民放、すべてそのコードの中を通って、液晶へと映像が映し出されるわけだ。しかし、アンテナ端子にこのイラネッチケーを取り付けることでNHKのデータだけがカットされる。するともう、そのテレビにはNHKが映らない。チャンネルを合わせても、真っ暗な画面が表示されるだけとなる。

開発したのは筑波大学の掛谷英紀准教授。将来、NHKを崩壊させた技術面での立役者として、歴史に名が刻まれるかもしれない人物だ。

さて、このイラネッチケーをテレビに取り付けることにより、NHKが映らなくなる。すると、何がいいのか? もちろん、事は受信料に絡んでいる。NHKが映らないのであれば、NHKの受信料を払わなくてよくなるかもしれないのだ。正確に言えば、「受信料契約を結ばなくてよくなる」という可能性がある。

ここはなかなか厄介な問題なので、少しずつ解説していこう。

なぜ、私たちはNHKと受信契約を結ばなくてはならないのか

これはご存知の方も多かろう。放送法という法律によって決まっているのである。その第64条を引用しよう。

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

「協会」とは日本放送協会、つまりNHKのこと。「受信設備」というのは、おおむねテレビのことを指す。この条文により、テレビを保有している私たちは強制的にNHKと受信料契約を結ばされることになる。もし家にテレビがあるのなら、それを拒絶することはできない。集金人に「結構です」と言って断ることはできない。法律上は、そうなっている。

しかし、もしイラネッチケーをテレビに取り付け、NHKが受信できなくなればどうだろう? イラネッチケーのくっついた、NHK総合もEテレビも、BSNHKも映らないテレビは、果たして「協会の放送を受信することのできる受信設備」と言えるだろうか? もし「ノー」であれば、受信についての契約を結ばなくてもよくなる。法律上、そうなるのだ。

イラネッチケーを取り付けたテレビは、放送法64条で言われている「協会の放送を受信することのできる受信設備」なのかどうか。

これが、イラネッチケー裁判で争点となっている問題である。

イラネッチケー裁判:パート1

イラネッチケーをめぐる裁判を起こしたのは立花孝志氏である。

この人は元NHK職員であり、「NHKから国民を守る党」の代表を務める人物だ。2016年7月の東京都知事選挙に立候補し、「NHKをぶっ壊す!」のフレーズを連呼していたので、記憶に残っているという方も多いだろう。この立花氏が、数年前からNHKに対し数々の裁判を提訴しているのだが、イラネッチケー裁判もその一つなのだ。

「イラネッチケーを取り付けたテレビはもうNHKを受信できない。だから契約する必要はないだろう」

これが、イラネッチケー裁判パート1における立花氏側の主張だった。

しかし、もう結論を言ってしまうならば、この裁判では立花氏側が負けた。2016年7月20日に東京地裁の判決が出て、それでもNHKの受信料を払うべしということになった。

NHKは映らないのに、なぜ?

ポイントは、このイラネッチケーが「取り外し可能」だったことである。

たしかに、イラネッチケーを付ければ、NHKを受信することはできない。だが、このイラネッチケー、素手でくるくる回すだけで取り外しが可能なのだ。だから、NHKを見ようと思えば、すぐに外して見れてしまう。だから裁判所としても、このテレビは依然として「協会の放送を受信することのできる受信設備」であると判断した。

考えてみると、これは妥当なことである。イラネッチケーを付けるだけで受信料の契約をしなくていいのなら、極端な話、アンテナ端子にキャップでもはめておけば受信料契約をしなくていいということになってしまう。もちろん、こんな理屈は通らない。

こうして、イラネッチケー裁判は負けた。

控訴審判決が2017年2月2日に出たのだが、これも同様の理屈で敗訴。やはり、イラネッチケーは原理上取り外せるんだから、契約は必要との判断が下されたわけだ。

しかし、こう思わないだろうか? イラネッチケーが「取り外し可能」であるために契約が必要なのだとしたら、逆に、イラネッチケーを「取り外し不可能」なかたちでテレビにくっつけてしまえばどうなるだろう? 二度と取り外せないように、溶接でもしてしまえば、そのテレビはさすがに「協会の放送を受信することのできる受信設備」ではなくなるんじゃないか?

これを、法律用語で「反対解釈」という。そして、この反対解釈に基づく裁判を、立花氏はすでに提起しており、現在進行中だ。イラネッチケー裁判パート2を見ていこう。

イラネッチケー裁判:パート2

パート1では、イラネッチケーは取り外しが何とかできた。しかし、このパート2では状況が違う。イラネッチケーをアンテナ端子に取り付けた上、パテでガチガチに固めたのだ。ネジでも固定した。

つまり、今回はイラネッチケーを「取り外し不可能」な仕方で接続し、もし強引に外そうものならテレビが壊れるようにしたのだ。

結果、第一審においてはNHKが敗訴。立花氏側が勝った。

こうして、イラネッチケーをガチガチに固定することによって、NHKとの受信料契約をしなくてもいいという判決を得たのだった。

ただし、NHKはこれを不服として控訴した。立花氏側が勝ちそうだ。それでも、NHKは最高裁まで争うだろうが……。

NHK側の言い分としてはこうだ。たとえイラネッチケーを取り外し不可能な仕方で付けたとしても「テレビの基本構造上、NHKは受信できる」から、契約は必要だ、と。もともとのテレビの基本性能としては、NHKを受信することはできる。だから、契約は必要だという主張である。

しかし、もしこの言い分が通るのであれば、テレビが壊れていても受信料契約が必要ということになってしまわないだろうか。たとえば液晶の画面を鉈で一撃、ぶっ壊したとしよう。それでも、基本性能として受信はできる。ならば、そんな壊れたテレビでも、受信契約を結ばなければいけないのか? 受信料を払わなければいけないのか?

さすがにそれは馬鹿げている。

こちらの裁判はこれからおそらく最高裁まで争われる。どうなるか、注目したい。

イラネッチケー騒動の行方は……

立花孝志氏は現在、このイラネッチケーを普及させようと尽力されている。おおむね費用は25,000円で、東京都と大阪を中心に取り付け工事を請け負っている。

もちろん、普通に付けただけでは契約義務はなくならないので、ロックタイト263という強力なボンドのようなもので接続するようにしている。溶接してしまうのが理想だろうが、それはなかなか技術的に難しいので、このやり方を採っているようだ。

こうしてイラネッチケーを普及させ、NHKと契約しない人が増えていけば、今後の裁判所の判決にも影響を及ぼせるだろうとの見通しがあるようだ。

しかし、こうした戦略が成功するかどうかはわからない。いくつかの疑問もある。

ロックタイト263は取り外し不可能と言えるのか

まず、このロックタイト263による取り付けが、「取り外し不可能」とまで言えるかどうか、である。たしかにこのロックタイト263は「取り外しを必要としないねじの固定に」とされており、永久固定を前提につくられたものだ。だが、商品の目的としてはねじのゆるみ防止がメインである。バーナーで熱すれば、取り外せないとまでは言えない。

というわけで、このロックタイト263による固定が「取り外し不可能」と言えるかどうかが問題になる。さらに、もしこれが「取り外し不可能」であり、受信料契約が不必要なのであれば、こんなことも言えるようになる。

普通のテレビを購入し、アンテナ端子をハンダ付けするか何かで埋めてしまえば、受信料契約をしなくてよくなるのだ。

イラネッチケーを取り付け、それでNHKは受信できないから契約しなくていいのなら、いっそ民放も含め、すべての放送を見れなくしてしまって、受信料の契約を回避することもできるという理屈になる。

テレビの用途は「受信」以外にもある

「それならテレビを買う意味がないじゃないか」と思われるかもしれないが、HDMI端子などを使えばモニター用として使用することはできる。Amazon Fire TVを接続して、ネットの「配信」による動画だけを見るという使い方だってできる。というか、そういう使い方をしたいというニーズはどんどん増えてくるだろう。そしたら、イラネッチケーを使わなくても、簡単にNHKの契約を辞めることができる。

果たして、こういうことが合法的にできるようになるのかどうか、裁判の行方に注目したい。

まとめ

以上のように、イラネッチケーをめぐってはいくつかの裁判が行われ、現在も進行中だ。ここでは2つの裁判のみを取り上げたが、実はこれ以外にも、また別の条件でイラネッチケーがらみの裁判は行われている。もし最終的にイラネッチケーの使用によってNHKとの受信料契約が不要となれば、受信契約をしない人、今はしてても解約する人というのは日本中で一気に増えていくはずだ。そうなれば、NHKがぶっ壊れるということも、現実的に起こり得る。

もし現在、NHKは見ていないし、契約も辞めたいという方がいたら、このイラネッチケーを取り付けてみてはいかがだろうか? イラネッチケーのモノ自体はAmazonでも5,000円程度で購入可能である。ロックタイトを使えば、自分で取り付けることも容易だ。

もしくは、何度も登場した立花孝志氏から直接購入することもできる。こちらは取り付け工賃や証明書の発行、万が一裁判になった場合の補償なども含めた料金となるので、25,000円程度となる。興味のある方はご本人に連絡してみてほしい。電話での注文を受け付けている。