官僚と政治家の違いって何? 今さら聞けない基礎知識をやさしく解説

テレビのニュースを見ていると、政治家と官僚という言葉をよく耳にする。「官僚が政治家の思惑を忖度していてけしからん」とか、「政治家は頭のいい官僚の操り人形でしかないんだ」とか。しかし、そもそも政治家と官僚の違いをはっきり説明できるだろうか。

ここでは、今さら他人には訊けない「政治家と官僚の違い」について、なるべくわかりやすく解説してみよう。

政治家は立法、官僚は行政

この2つの違いを理解するためには、三権分立から確認しておくといいだろう。三権分立、だれもが中学校・高校の社会で習ったあれだ。モンテスキューというフランスの思想家が提唱し、今でも世界中でスタンダードとなっている仕組みである。

三権分立の図

三権とは、立法・行政・司法のこと。組織で言うと、立法は国会、行政は○○省といったお役所、司法は裁判所がそれぞれ担っている。この3つの権利を同じひとつの組織が握ってしまうと暴走したとき危険だから、分割して別々の組織にして、お互いににらみを利かせるようにしようということである。

政治家は国会議員であり、国会で法律や予算を成立させる人たちだ。立法を担当している。官僚はその法律に基づき、国の運営を行っている。これが行政。役割が違うのである。

ちなみに、司法を担う裁判所はどちらからも独立しているわけだが、どちらかと言えば行政に近い仕組みで動いている。なので、裁判所のえらい人たちは司法官僚と言われることもある。

政治家と官僚はルートが違う

また、政治家と官僚はなり方もだいぶ違う。ここも重要なポイントだ。

政治家はご存知のように、選挙によって選ばれる。衆議院でも参議院でも、大々的に選挙が行われ、町中にポスターがはられ、選挙カーが駆け巡り、街頭演説が行われて、多くの票をゲットした人が政治家になる。「選挙で票を集める」。これ以外に、政治家になる方法はない。

一方、官僚はまるで違う。官僚は公務員試験を受けて合格し、各お役所に採用されてなるものだ。筆記試験は高校で習ったような社会や理科、国語や英語といったものに加え、法律・経済といった分野が出る。さらに、役所によって違うが、集団討論や面接も課される。

つまり、官僚になるというのは若い人が企業に就職するのと同じ感じである。

官僚はよくエリートと言われることがあるが、採用されるための試験は難しいので、学力が低いとなれない。実際、霞が関の財務省や経産省、厚労省といった役所で働く官僚は東大・京大・早稲田・慶応など有名大学出身者がかなり多い。

政治家の種類

国会議事堂

さて、ここまでは政治家=国会議員ということで話を進めてきたが、実は政治家は国会議員だけではない。衆議院議員、参議院議員以外にも、都道府県、市町村の単位でそれぞれ政治家がいる。都道府県のトップは知事、その議員は都議会議員とか県議会議員だ。市町村にもそれぞれ長がいて、また議員もいる。

もちろん、小さな自治体の議員の方がだいたいなりやすい。政治家を志す人は、おおむね地元の市町村の議員からはじめ、都道府県を経て、国政進出となる。元総理でいま民進党の幹事長をしている野田佳彦も、政治家としては千葉県議会議員からスタートしている。

補足

もっとも、有名な政治家の二世であったり、もともと有名人だった人などはいきなり国政に出ていくことも多い。安倍総理は会社員、父親・晋太郎の秘書を経て、いきなり衆議院議員になっている。また、柔道の谷亮子、SPEEDの今井絵理子は最初から参議院議員となった。

官僚の種類

財務省

官僚にもさまざまな種類がある。まず、「官僚」という言葉の定義自体が割とあいまいで、行政職の公務員全体を指すこともあれば、霞が関で働くキャリア官僚のみを指す場合もある。ただ、町役場で働くおじさんが「官僚」というイメージはあまりないと思うので、ここでは地方公務員はのぞき、国家公務員だけを考える。

国家公務員にもおおきく2種類あり、キャリアとノンキャリアがある。総合職の幹部候補として採用されるのがキャリア、一般職として採用されるのがノンキャリア。この2つは最初から試験が別々で、難易度も違う。「官僚」のいちばん狭い定義が、このキャリア官僚である。

キャリア官僚は財務省、総務省、厚生労働省、外務省など、○○省という役所に入り、そこで働いて出世をめざす。そのトップが事務次官である。官僚でいちばんえらいのが事務次官。

なぜいちばん偉いのに「次官」なのかと言えば、省のトップは政治家である大臣だからだ。大臣はおおむね政治家から選ばれるため、官僚は政治家の上に立つことはできない。

法律は実際には官僚が作っている

政治家は法律を作り、この法律に基づいて官僚がいろんな仕事をする。これが建前だ。だが、実際にはだいぶ違う仕組みで動いている。

まず、法律を実質的に作っているのは官僚だ。「立法は政治家の仕事なのに、なんで行政のはずの官僚が法律を作るんだ?」と思われるだろうが、実際、これで動いている。法律を作るとなると専門的な技術や知識が必要となり、そういう部分では官僚の方が優れているのだ。

もちろん、官僚が作った法案(法律のもと)は国会において政治家によって吟味されるから、官僚が暴走する心配はない。「へへ、おれたち官僚にとって都合のいい法律をどんどん作ってやれ!」と思っても、政治家が「あかん! そらあかんで!」とストップをかけられるから大丈夫だ。

また、政治家が自分たちで法律を作る場合もある。これが本来のあり方なのだが、珍しいことなのでわざわざ議員立法などと言われている。

官僚から政治家になることもある

政治家があとから官僚になることはまずない。官僚になるための試験は30歳くらいが上限なので、政治家を経てから官僚になるのは難しい。

逆に、官僚が役所をやめて政治家になることはよくある。たとえば「違うだろ!」「このハゲー!」のフレーズで話題となった豊田真由子議員(別名・ピンクモンスター)も、もともとは厚生労働省の官僚だった。

同じようなことは地方でもよくあり、地方の首長や議員がもともとはその地域の役所の公務員だったというのはよく聞く話だ。

まとめ

一言でいえば、政治家は選挙に通って国の進むべき大枠を作る人、官僚は試験に通って実務を行う人だ。ごっちゃになりやすいが、なるためのルートも仕事の内容も分かれている。

一時期、政治家は官僚に操られているだけだという批判もあったが、そんな一方的なものではなく、実際には微妙なバランスの中でなりたっているようである。

ニュースを見ていると、目立つのは政治家のみで、官僚はほぼ表には出てこない。政治家の名前ならいくらでも出てくるが、知っている官僚というとたまたま森友問題や加計学園問題で話題となった一人とか二人くらいのものだろう。けど、政治家と官僚はいっしょになって国の運営を行っている。

その違いや関わり方を知っておくと、ニュースを見たときに理解が深まるはずである。

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2017.12.28