NHKになりきって、何としてもネット受信料を徴収する方法を考えてみた

スマホとテーブル

2017年6月、NHK受信料制度等検討委員会は、テレビがなくスマホでしかNHKを見られない世帯にも、将来的に受信料を求める方向性を示した。すると、「スマホを持ってるだけでNHK受信料を取られるようになるのか!」と、驚きと怒りの声がネットで上がった。

NHK受信料制度については不満や問題が盛んに指摘されているが、この「ネット受信料」は今後どうなるのだろうか? 前半では問題点を整理し、後半ではNHKの立場になりきって、どうすればもっと受信料を集められるのか考えてみた。

NHKネット受信料の現状

先月、NHKのネット受信料についてニュースが流れたのは、NHK受信料制度等検討委員会という長い名前の委員会がとある答申案を出したからだ。その内容は、テレビ放送をスマホにリアルタイムで流す「常時同時配信」について、テレビがない世帯に対しても受信料を求める、というものだ。

現在のところ、普通のスマホはテレビ放送を受信することはできない。だから、スマホしか持っていない人は受信料契約を結ぶ必要がない。だが、将来的にはスマホしか持っていない人からも受信料を取れるようにしようというのが大筋である。

けれど、答申案によると、スマホを持ってれば即、受信料を取るというものではなく、NHKの同時配信が見られるアプリなどをダウンロードした場合に、という条件が付けられるようだ。ニュースの表面だけを見ると「スマホやパソコンしか持ってないのに受信料を取られちゃう!」かのように見えるが、さすがにそういうことではなさそうである。

補足
「受信」とは、電波を受信することを指し、「常時同時配信」とは、電波による放送をネットなどで配信することを指す。今のところ、放送法では「受信設備」の設置者に契約義務があるとしているため、ネットでテレビ放送が視聴できたとしても、契約する必要はないのである。これを変えていこうというのが最近のNHKの流れだ。

今、ネットでNHKを見る方法

ちなみに、現在でもすでにNHKの番組をネットで視聴する方法はいくつかある。例を挙げてみよう。

NHKオンデマンド

見逃し見放題パックと特選見放題パックの2種類があり、それぞれ月額972円。ニュース、連続テレビ小説、ドキュメンタリーなどさまざまな番組が見られる。今だとひよっこ、連続テレビ小説こころ、おんな城主直虎、定年女子が人気だ。

U-NEXT

NHKオンデマンドと連携した機能のようだが、U-NEXTでもNHKの過去の番組を視聴することができる。U-NEXTに加入すると毎月ポイントが1,000ポイントほど増えるので、それを利用してドラマなどを視聴可能だ。人気の「ひよっこ」は1話108円。NHKスペシャルは216円。

KeyHole TV

電波で放送されたものをだれかがネットにリアルタイムで流し、それを視聴できるというアプリ。これは上2つと違いアーカイヴされたものを見るのではなく、リアルタイムで見られる。ただし画質が悪く頻繁に止まるため、快適な視聴にはほど遠い。

このように、実はNHKオンデマンドとU-NEXTにより、ドラマやドキュメンタリーのようなコンテンツであればすでに快適に見られる状態は出来上がっている。私としては、U-NEXTがあれば充分だ。

ただし、どちらも電波を「受信」してるわけではないことに注意。これらはあくまで「配信」である。だから当然、NHK受信料を支払う必要はない。

テレビがない単身世帯から受信料を取るには?

さて、ここからはNHKの気分になって、どうすればより受信料をたくさん集められるのかを考えてみよう。

チェス

一人暮らしの若者のテレビ離れ

まず大前提となるのは、テレビ離れが進んでいるこの現状である。家族で住んでいる世帯であればテレビが完全になくなるという事態は考えづらいが、怖いのは一人暮らしを始める若者だ。今後、20歳前後で家を出た大学生・専門学校生・新社会人がテレビを部屋に置かないということはどんどん増えていくと思われる。すると、そこから受信料を取れなくなる。

これまで、実家を出たばかりの若い一人暮らし世帯は格好のターゲットだった。法律のことも何も知らず、「法律で決まっている」「契約の義務がある」などと言えばコロリと契約書にサインをし、黙って支払ってくれていた。

なのに、テレビがないとなればさすがに契約を迫るわけにはいかない。ワンセグ機能付き携帯があればまだよかったが、最近じゃiPhoneのようなスマホばっかりだ。パソコンに放送受信チューナーがあればいいが、そんな機種も少数派。こうなると、いくら百戦錬磨のNHK集金人といえども手に負えぬ。

こうなったら、放送を受信できないスマホやパソコンでも受信料を取れるようにするしかない。道は険しいが、今から数年後を見越して準備を進めていけば、何とかなるかもしれない。

まずはスマホ・アプリの普及を

先に紹介した答申案では、「視聴用のアプリのインストールや、視聴のためのID登録」をスマホでの受信料徴収の条件にしようとの提案がなされていた。さすがに、「スマホを持っているだけで受信料契約を求める」のは難しい。となると、NHKの同時配信が見られるアプリを多くの国民にダウンロードしてもらう必要がある。

ポイントとなるのは、テレビをすでに持っていて受信料を払っている世帯の場合、新たにアプリをダウンロードしても追加の料金は発生しないというところ。父母がテレビを設置していてNHK受信料を払っているなら、その子供がスマホにNHKアプリを入れても、無料で見ることができる。

この状態のときに、なるべく中学生や高校生にアプリを使ってもらうことが大事だ。いわば、種まきである。

いざ一人暮らしとなったら受信料契約を請求

実家にいてスマホでテレビの同時配信を見ていた子供が進学や就職で一人暮らしを始めたとする。さらに、そこでテレビを部屋に置かなかったとする。この場合、2017年現在だと受信料を払ってもらうことができない。

だが、ここで「種まき」の効果が出てくるのだ。部屋にテレビがなく、ワンセグもなく、チューナー付きパソコンすらなかった場合でも、スマホにNHKが見れるアプリが入っていれば、受信料契約を迫ることができる。

集金人がやってきたときに急いでアプリを消去したとしても、引っ越したその日にNHKの同時配信が見られる状態であれば、とりあえずその月はNHKと契約をしなければならない。となれば、まずは初月の取りこぼしをなくすことができる。ここまでのシナリオはできている。

課題1:いかにしてスマホ・アプリを普及させるか

さて、以上が大まかな道筋だが、まず第一に、どうやってNHKを見られるアプリを広めていくかが問題だ。主なターゲットは中学生・高校生といった若者だから、ドラマやドキュメンタリー、ニュースなどが見られると言ったところで訴求力が弱すぎる。そもそもほとんどのNHKのコンテンツは、若者には受けない。

狙うべきはスポーツ中継だろう。スポーツはバラエティやアニメ、ドラマなどと違い、あとになってから見てもおもしろくない。リアルタイムで見ることに意味がある。このスポーツ中継をエサとして、アプリのダウンロードを促すべきだ。

たとえば、家族はリビングでドラマやニュース、バラエティなどを見ている。そのあいだにNHKでスポーツの中継をやって、子供はスマホでそれを見るような状態を作り上げる。追加の料金はかからず、アプリはすぐにダウンロードが可能だ。だったら、かなりの人がそのアプリを導入するだろう。「この無料のアプリで、家族のチャンネル争いを解消!」みたいなキャッチコピーで宣伝してもいい。

最大のチャンスは当然、次の東京オリンピックである。2020年7月の開会までに優れたアプリを開発・宣伝し、一気に普及させることが最重要課題だ。

さらに、au、docomo、SoftBankといったキャリアに協力を要請できればしたいところだ。新しいスマホを購入したら、初期サービスとしてもうNHKが見られるアプリを速攻で入れてしまう。「こちらは無料ですから」と窓口の者に言わせてしまってもいい。

課題2:アプリを消去された場合はどうするか

以上のようにして、若い人が実家にいるうちに同時配信アプリを可能な限りダウンロードさせておく。それを可能な限り、日常の一部にしてしまう。いま、スマホでYouTubeを見るような感覚でテレビを見るような習慣を根付かせる。

と、この目論見がうまくいったとしても、やはり大きな問題点が残る。一人暮らしスタートの前後に、そのアプリを消去されてしまった場合にどうするかということだ。初月はまだいいとしても、5月になって「アプリを消去したので、受信契約を解約します」と言われたらどうするか?

最大の防波堤は、解約の手続きを可能な限り煩雑にしておくことだ。今でもNHKのホームページを見ると、「新規契約」のメニューはでかでかとあるのに、解約方法については掲載されていない。実際には、解約の方法はこのようになっている。

  1. NHKのコールセンターに電話
  2. 解約の用紙を送ってもらう
  3. 記入して郵送
  4. 解約完了

もちろん、すんなりと事が進むようにはなっていない。もし「テレビを撤去したから解約したい」と言えば、テレビを売却・廃棄したときの領収書やシールなどを要求される。そういったものがない場合はNHKの職員が確認をしに来るらしい。また、他にもさまざまな理由をつけて解約用紙を送らないという水際作戦で対応している。

アプリの消去に関しても、解約に際してはその証明を求めるようにすればいい。具体的な方法はまだ見えないが、たとえばスマホ内に入っているアプリがすべて分かるようなキャプチャ画像をプリントアウトして解約届に同封させるとか、職員による目視のチェックを取り入れるなどすればいい。

とにかく、解約のための手続きを面倒にしておけば、アプリ削除に対してもかなり有効な対策となろう。一人暮らしを開始してすぐの若い人であればただでさえ新しい環境で疲れているので、「もうこのままでいいか」となることが期待できる。

まとめ

以上、NHKのネット受信料について考えてみた。

世の中の流れは完全にテレビから離れ、ネットへと向かっている。これまで通りの受信料を集めようと思えば、どうしたってネットでの受信料徴収を考えざるを得ない。まさに、NHKにとっては死活問題である。

ただ、「スマホがあれば受信料支払い義務が生じる」とするのは法律的にも難しいし、世論の反発を食らうことは必至だ。なので、まずは「アプリをDLした場合だけですよ」という言葉を緩衝材として普及を進めていき、一人暮らしとなった若者をターゲットに新しい契約者を増やす。これが基本路線。あえて受信料徴収を個人単位でなく世帯単位としているのは、子供に対し「アプリは無料」との印象を根付かせるためだ。

課題はいくつかあるが、まずはスポーツの生中継をエサに利用者を増やして、とにかくアプリの普及をめざす。あとは、一人暮らしを初めてすぐの人を初訪問で落とす。確実に契約させる。一度契約を結んでしまえば、あとは水際作戦で解約を防げばいい。

どの程度、この想像がNHKの実態と合致しているのか分からないが、基本的にこのような戦略が取られるような気がする。青少年諸君はウイルスと同じくらい、テレビの同時配信が見られるアプリには注意をした方がいい。