乳毛が生える意味、あるいはその存在理由についての一考察

乳毛、それは不可思議な存在。人体はすべからく合理的で、あらゆるパーツには固有の存在意義があるはず。なのに、乳毛だけは例外だ。なぜ生えてくるのか、まったくわからない。

だが、わからないまま終わる。そんなのは嫌だ。持てる知識と思考力を使い、乳毛について本気で考えてみた。

乳毛が生えてきた時期、およびその外形的特徴

いったい、いつからだ? 乳首に毛が生えてきたのは。おそらく二十歳前後だったと思うが、第二次性徴より遅れること数年、気づいたらやつらは生えてきた。

最初は数本だったかもしれない。だが、気づいたら数十本は生えていた。おまけに一本一本が太く、長く、縮れていて剛毛で、トータルの数は少ないものの、一本一本の実力は下の毛に匹敵するほどである。

さすがに写真を撮って掲載することは控えるが、乳毛の生えた乳首はあたかも幼児が書いた太陽のごとくである。中央には乳首があり、その周りに放射状に乳毛が伸びている。

太陽

乳首、および乳毛のイメージ図

乳毛が存在する意味とは

ここで、ひとつの疑問が浮上する。それは、乳毛というものの存在理由、あるいは意味は何なのかということだ。

大事な部分をガードするため?

人体はきわめて目的合理的にできている。内臓や骨、筋肉などはもちろん、各部・各組織にはそれぞれ目的があり、その目的に適合した作りになっている。

耳は外界の音を集め、効率よく鼓膜へ響かせるようになっているし、手指は道具を制作したり使用したりするのに都合がいい。体毛もそうだ。頭髪は日光や風雨から大事な頭蓋を防御し、下の毛は大事な部分を保護している。体毛だって、適度な量で外部刺激から表皮を守ってくれている。

だが、乳毛はどうだ?

たしかに、乳首は敏感な部分ではある。だが、男性にとって乳首というのはまったく不要だ。一生、何の役にも立ちはしない。守ったところで何になる? さらに言えば、乳毛は防御装置としてはあまりに貧弱である。

そう、量としても中途半端すぎるのだ。

存在感が中途半端すぎて、「乳毛(ちちげ)」という言葉自体が不安定な地位に置かれている。たった今調べたところ、goo国語辞書と三省堂 Web Dictionaryには「乳毛」という単語は掲載されていなかった。

単語としてもいまひとつ認められていないこの乳毛、いったいなぜ、何のために存在するのだろう?

フェロモンを拡散するため?

こんな話を聞いたことがある。

「脇毛には、フェロモンを拡散するという役割もある」

脇にはアポクリン腺というものが集中している。これはワキガの原因にもなるのだが、フェロモンを分泌し、異性にアピールするという働きも持っている。脇毛はこのフェロモン拡散の役割を果たしているらしいのだ。

この伝でいけば、乳毛もフェロモン拡散の道具ということになるかもしれない

実際、ワキガと同様、実はチチガというものもある。つまり、乳首にはアポクリン腺がやや多いのだ。だから、フェロモン拡散のためということかもしれない。

だがそれにしても、量が半端だ。脇毛レベルで生えてくるからまだ納得はできるのだが。

乳毛が長いと金運アップ?

さて、これは余談だが、こんな話もある。乳毛があると金運がよくなる。逆に、乳毛を処理してしまうと金運が下がる、と。

だが、これは迷信だろう。だれが言ったとか、どこに書いてあるという出典もわからない。根拠ももちろんわからない。取るに足りないものだろう。

乳毛の処理方法

はっきり言って、乳毛は邪魔だ。ムダ毛中のムダ毛、選りすぐりのムダ毛、キング・オブ・ムダ毛である。こんなやつは処理してしまうに限る。で、その方法としては……

  • カミソリで剃る
  • 毛抜きで抜く
  • 抑毛剤・除毛剤を使う
  • 脱毛サロン・クリニックに行く

といった方法が考えられる。

私自身は最初、毛抜きで抜いたこともあるが、痛いし面倒だし、皮膚を傷つけることがあるのでやめた。下手をすると埋没毛になってしまう。

現在は基本放置で、たまに気になると剃ったりする。位置が位置だけに若干やりにくいが、まあ、たまに剃ればそれで解決だ。

抑毛・除毛のクリームやローションを使ってもいいのだろうが、そこまでやる気にはならない。サロンやクリニックに通うというのも面倒だ。

ザ・ムダ毛ではあるが、処理はちょちょいと剃ればいいだけなので、あっけないものである。

乳毛以上のムダ毛を発見

ここまで書いている途中、実は、乳毛以上のムダ毛を発見してしまった。そういえば、まだこいつがいたのだ。乳毛はムダ毛のキングじゃない。本当のキングは、こいつっ!

肩毛

一本だけ中途半端な位置に長い毛が生えている

肩毛である。

「かたげ」と入れて変換しても出てこないくらいマイナーな、ほとんど存在を語られることすらないないムダ毛、それが肩毛。

こいつは乳毛よりおかしな存在で、実に奇妙。乳毛も他の部位のムダ毛に比べて数が少ないのだが、肩毛はたった1本だけで生えてくる!

一切群れず、仲間を持たず、肩という体毛不在の体毛砂漠に単独で出現する肩毛。これはもはや、乳毛以上に存在理由も意味もわからない。

肩は敏感な部分でもなし、アポクリン腺が多いわけでもなし、長い毛が生えてくる理由がまったくもって見当たらない。何の目的合理性もなく、理由をこじつけることさえも不可能だ。

いやしかし……もしかしたら、肩毛は人間に何かを考えさせようとしているのかもしれない。

乳毛と肩毛が教えてくれるもの

創世記

神の創造のみ技を、人間が完璧に理解することなどできはしない。

乳毛の存在理由とは何か、生えてくる意味とは何か、そんな疑問に向き合ってみた。だが、一つふたつの弱い推測はできても、決定的な結論に到達することはできなかった。あまつさえ、肩毛というさらに不可思議な存在に翻弄されることとなった。

だが、もしかしたら、乳毛や肩毛は、人類に対する神からのメッセージなのではないか?

人間はあまりに合理的に思考し、身の回りすべてを便利なもので固めてきた。目的のための道具を発明し、家を作り、都市を建設した。今、周囲を見回ししてみると、目的のない物体はひとつたりとも存在しない。

そんな中で、乳毛と肩毛はその存在理由を人間に明かしてはくれない。神秘のヴェールに包まれている。合理性や文明に回収されない、神の被造物だ。私たちはからだに生えている乳毛や肩毛を見るとき、人間の思考の浅はかさ、自然の神秘に思いを馳せるべきなのかもしれない。