Kindleで本を出版してみた|初心者のエッセイ風奮闘記

今年に入ってから、私は小説を書いていた。サイトの更新もそっちのけで、ひたすらそればかりにかまけていた。で、結果としてつい先日、その原稿が完成した。時間と情熱を注ぎ込んだ、愛しき一編の小説が。

しかし、このままお蔵入りにし自分で愛でるだけというのもつまらない。新人賞に出すようなタイプでもない。というわけで、私は生まれてはじめて、AmazonのKindle版でこの小説を出すことに決めた。

以下、その記録である。

AmazonのKDP(Kindle Direct Publishing)とは?

Kindleとは何か? それは通販最大手のAmazonが提供している電子書籍のアレである。Kindle専用の端末とか、PCやスマホのアプリで読める、電子書籍だ。このKindleで本を出版すること、あるいはそのシステムをKDPなんて言ったりもする。

私はなんとなくこのKDPというものを知っており、今回書いた小説はすぐ周囲の人に読ませたかったので、Kindle版で出版しようと思った次第だ。

結論から言うと、Kindleでの出版はきわめて短時間で、簡単に、サクッと終わらせることができた。ほぼ、初日ですべての作業が完了したのだ。原稿と表紙データさえあれば、はじめてでも1日とか2日でやれてしまうという、本当にお手軽な出版方法なのである。

このように、あのAmazon様で自分の作品が売り出されている。

まずはKindle電子出版のハウツー本を買え

はて、推敲を終えた私はそのテキストデータをたずさえ、考えた。どうやってKindle出版をやろうか、と。Amazonの公式ページだけ見てもわけわからないだろうし、無料の情報をいちいち検索して調べるのもめんどくさい。おまけに、古い情報に撹乱されるおそれもある。そんなことで時間を無駄にはしたくない。

というわけで、私はAmazonでハウツー本を探すことにした。餅は餅屋とでも言おうか、Kindle本の出し方は、Kindle本で学ぶのが安全で確実なはず。で、この読みはどんぴしゃで当たった。

私が購入したのは、もっともよさそうだった『さるでもできるKindle電子出版』(著・海河童)である。「ベストセラー」との冠があり、しかも頻繁に中身が更新されている。レビューも54件あって星4.5となっている。最高じゃないか。

というわけで、このあと私はこの『さるでもできるKindle電子出版』を読みつつ、一つひとつステップを踏んで出版をめざしていった。結果から言えば、それでできた。悪いことは言わない、これからKindle本を出したいという人は、この電書を買うべきである。Kindle Unlimited(読み放題サービス)に加入していれば0円だし、普通に買っても250円である。

なお、この本の著者である海河童さんのサイトはこちら。Kindle本を出すなら、ぜひとも目を通しておきたい。

だからダイビングはやめられない(海河童)

でんでんマークダウンと2度の変換

細かいことは上の本を読んでもらうとして、ものっすごくざっくり説明すると、Kindle本を出版するにはこんな工程を踏む必要がある。

  • txtファイルに「でんでんマークダウン」で見出しや改行、リンクを入れる
  • でんでんコンバーターで原稿と表紙のデータをepubに変換
  • Kindle Previewerでさらにmobiに変換
  • KDPの公式サイトでそれらのデータを登録
  • しばらく待つ(最大72時間)

たったこれだけのことだ。

ほんのすこし面倒に感じるのは、ファイル形式を2度も変換せねばならないというところ。これは何とかならなかったのかと思うが、仕方ない。Microsoft Wordのデータをそのまんまアップロードする方法もあるらしいのだが、私はなんとWordを持っていないので、この2度の変換というステップを踏んだ。

まず、「でんでんマークダウンてなんやねん?」と思うが、これはHTMLのタグみたいなもんだ。「HTMLのタグってなんやねん?」と問われれば、それはごく簡単なコンピュータ言語。「ここを太字にしろ」「ここは見出しにしろ」といったことを示す目印みたいなもんだ。

でんでんマークダウンはオリジナルの記号で、それをあらかじめテキストファイルに書き込んでおく必要がある。私が使ったのは、見出し(章タイトル)を示す「##」と、改行を示す「<br/>」、それから改ページの「===」の3種類くらい。ほぼこれで十分である。

でんでんマークダウン

あとはでんでんコンバータでファイルをepub形式に変換すればいい。

でんでんコンバータ

Kindle Previewerが起動しないときは?

このあと、epubファイルというのをさらにmobiファイルに変換しなければならない。いちばん意味不明なのがこのステップで、なぜいちいちepubを挟まねばならないのか謎だ。せめて、txtから直でmobiになってくれ、と思うだが……ま、文句を言っても仕方ない。

で、epubからmobiにするにはKindle Previewerというソフトが必要だ。なので、こいつを公式サイトからダウンロード、そしてインストール、さらに起動っ!

するとどうだろう。Kindle Previewerは起動しやがらないのだ。「レガシー Java 6 ランタイムがないと起動しないもん!」とわがままを言い出す。

「こちとら最新のiMacじゃない。つべこべ言わず起動しやがれ」
「無理っ! むかしのJavaがないとイヤだ!」

こんな押し問答である。なので、仕方なく、古いJavaというやつをダウンロードし、インストールしてやった。ちなみに、Javaってのが何者かは知らない。なんか、コンピューター関係のややこしい何かなんだろう。

で、指示通りにしてやったのだが、なぜかKindle Previewerは起動しない。アイコンをダブルクリックすると一瞬は起動するそぶりを見せるのだが、すぐまた消えてしまう

これに怒った私は、こう言ってやった。

「おい、Javaっていうのを持ってきてやったぜ。さっさと起動してくれ」

けれど、Kindle Previewerは無視を決め込んでいる。何度クリックしてやっても、働こうとしない。どうしようもないやつだ。

こうなったらかくなる上は……ということで、私はGoogleに泣きついた。「Kindle Previewerを起こす方法を教えてくれよ!」と。すると、Googleはあっという間に答えを教えてくれた。それがこちら。

The Day’s Angel

ここにバッチリ解決方法が書かれており、実際、この通りにやったらできた。ごくごくあっさりと、Kindle Previewerが起動したのだ。

ちなみに、このサイトの記事では「Mac OS El CapitanでKindle Previewerが起動しない件」となっているが、私のOSはもっと新しいSierraである。El Capitan以降であれば、たぶんこの方法で解決するはずだ。

なんだかデリケートなデータを書き換えるようで緊張するが、落ち着いてやれば大丈夫だ。きっと……。

KDPの公式サイトで原稿と表紙をアップロード

あとは、KDPの公式サイトで原稿と表紙をアップロードすればいい。ここはメインとなる工程だが、実は簡単である。そんなに迷うところもない。ただし、2点だけ注意点を書いておこう。

1)タイトル、内容紹介、著者名などは事前に決めておくこと

いくら簡単とはいっても、タイトルや内容紹介、著者名はあらかじめ用意しておいた方がスムーズだ。せっかく苦労して書いた原稿なのだ、そういう見せ方にもこだわりたい。

まあ、タイトルと著者名はだいたい決まっているだろうから、問題は内容紹介。ここはぜひともこだわりたいところ。Kindle本はだれかがCMを打ってくれるわけでも、書店に営業をかけてくれるわけでもない。この内容紹介がほぼ唯一の、自分でできるPRポイントなのだ。

内容紹介に書ける文字数は4000字とかなり多い。まずは一番上にキャッチコピー的なものを書き、そのあとは目次・内容紹介・著者プロフィールなどを書くといい。どんなふうにすればいいかは、他のKindle本の内容紹介を見て軽く研究しておこう。

なお、出版社名とか英語版タイトルも自由に決めることができる。こだわる人は、そういう部分も決めておくといい。

2)アメリカの税金について

Kindle電子出版についてネットで調べていると、印税のうち30%ほどが税金としてアメリカに取られるとか取られないとか、それを回避する方法があるとかないとか、いろいろ書かれている。この辺は情報が錯綜しており、ぼんやりググってると次第に混乱してくる。

結論を言おう。

アメリカに30%の税を支払う必要はない!

KDPで登録作業をしていると、アメリカさんに税に関する申告書を書かされるのだが、これはそう難しいものではない。上の「さるでもできる」を読みながらやれば、さるでもできるはずだ。

Kindle本の表紙はPixelmatorがおすすめ

さて、以上書いた中で、私は大事な要素をひとつほったらかしにしていた。それは、表紙についてだ。Kindle本の表紙は、いったいどうやって用意すればいいのだろうか?

「んなもん、Photoshopでチョチョイのチョイよ」

という玄人の方はいいが、ペイントで満足に線も引けないという場合、どうしたらいいのか。選択肢はいくつかある。

  1. オンラインの素材やジェネレータを使って簡単に作る
  2. ココナラやランサーズで外注する
  3. 自分でがんばって作る

1は試してみたのだが、出来栄えには満足できなかった。使ったのは「いーブックデザイン」さんというサイト。

タダで使わせてもらってアレなのだけれど、やはりちょっと、これでは満足できなかった。いやまあ、内容によってはこれで充分なのかもしれないが、中身が小説なので、もっとステキな物語を予感させるようなものにしたかった。

そうなると、ココナラなどで外注してしまうのがいいかもしれない。調べてみると5,000円から10,000円くらいでプロ顔負けの表紙だったりカラーイラストが手に入るようだ。これは心が動く。

けど、このときの私は急いでいた。いちいち発注して、入稿を待って、修正を依頼して……なんてことをしてたら時間が経ってしまう。なので、今回はこれも却下。

というわけで、自分でがんばることにした。使ったのはPixelmatorというソフトだ。これはPhotoshopにユーザーインターフェースが似ているらしく、めちゃんこ使いやすい。画像編集なんて、ちょっと文字を入れるか切り取りくらいしかやったことがなかったが、これはすぐに使いこなすことができた。

たとえば、上とは別の作品がこちら。

だいぶ前に書いた小説なのだが、その内容と雰囲気がうまく出ている。まあ、自分にしかわからないことだが。

Pixelmatorは、現在3,600円。買い切り。Kindle本の表紙を自分で作りたいという人にはおすすめのアプリである。ガイドとしては、やはりKindle本のこちらを活用。

なお、表紙に使ったフリーの画像はこちらで調達した。いずれも便利なサイトだ。

素材のある場所

Unsplash:海外のフリー写真素材、スタイリッシュでおしゃれなものが多数

ヒューマンピクトグラム2.0:緑色の棒人間など、独特のイラスト

Wikimedia Commons:偉人のサインや肖像画など、著作権の切れた素材がある

Kindle本表紙の縦横比にご用心!

ここで一つ、注意していただきたいことがある。それは、表紙の縦と横の比率に関することだ。

Amazon公式サイトには、縦と横の比率は「1.6対1が理想」とされている。具体的には「2560×1600px」がいい、となってる。

だが、いざこれで作成してみると、画像がなんだか縦に長いのである!

他のKindle本をチェックして、比較してみると、この比率で作った画像が縦長なのは明らか。不恰好である。なんでこれが理想なのか、私はしばらくわからなかった。

しかし調べたところ、どうやらアメリカのアマゾンだと、この比率の表紙が標準的らしいと判明。Amazon.comのKindle本を見てみると、だいたい、縦長になっている。

おそらくだが、KDPのサイトに書かれていた「理想の比率」とは、アメリカ基準のものであるようだ。日本には当てはまらない。まだまだ、KDPは直訳調というか、日本のことまではよくわかっていないらしい。

では、日本基準で美しい縦と横の比率は何か? それは、一般的な単行本で使われている「1.48対1」である。

この比率は、いわゆる四六判(しろくばん)というサイズで、単行本によく使われているものである。これで画像を作ってみると……やはり! とてもよくAmazon.co.jpになじむ。紙の本が出版されているかのように。

というわけで、見栄えにこだわるなら、Kindle本の表紙は「1.48対1」と覚えておこう。画像は「1480×1000px」で作ればいい。

KDPのプロモーションは自力で

KDPでは、簡単に本を出すことができる。原稿を書くのと表紙の作成は手間がかかるが、それ以外の作業というのは本当に楽チン。2度目からはもう、2、30分もあればできてしまう。それくらい楽。

さて、あとじゃAmazonさんが勝手に自分の本を売ってくれて、自分には印税ががっぽがっぽ入ってきて優雅な生活が待っている!——んなわけはないのである。

よっぽどいい本を書けば別かもしれないが、そうでなければ勝手に売れてくれるということはない。Amazonは電子書籍を置かせてくれているだけで、必死でプロモーションをしてくれるなんてことはないのだ。

というわけで、本を「出す」のはAmazon、本を「売る」のは自分である。

上に書いた内容紹介に凝るのもそうだし、表紙もきれいな方がいい。出版したらウェブサイトやSNSで周知したりもいいかもしれない。ときには無料キャンペーンを張って拡散を狙い、読者登録を促して囲い込みをはかる。などなど、工夫をしていかなければいけない。

まだ私はこんな段階ではないが、「Amazonが勝手に売ってくれる」などと思っていると、あとあと残念な思いをすることになりそうだ。自分でさまざまな工夫をしていきたい。

KDP出版代行を使う必要はあるか?

Kindleでの出版について調べていて、代行業者があるのに気づいた。おおむね、3万円から5万円というのが相場のようだ。だが、果たして代行業者を使うメリットがあるだろうか?

私の場合はほぼ1日で出版までこぎつけることができた。表紙の準備を含めても2日か3日。となると、1日分の労力を1万ちょっとで買うことになるわけだが……。

最初の印象としては、Kindleでの出版代行に3万とか5万は高いと思ってしまう。自分でやった方が全然いい、と。けど、それも考えようで、登録から表紙の準備から、すべて丸投げでやってもらえるなら、まあ、懐事情によってはアリかもしれない。

あと、1冊とか2冊だけ出せればいいという場合も、代行を使う価値はありそうだ。たった1回や2回のために、ファイル変換だの表紙の準備だのを自力でやるのは効率が悪い、かもしれない。

ただし、今後も継続して出していこうと思うなら、断然、自力でやった方がいい。一度覚えてしまえばとってもカンタンなKindle出版、いちいち業者を通すなんて損すぎる。むしろめんどくさい。

というわけで、懐事情に余裕があって、なおかつ1冊2冊しか出さないよー、という方は代行を検討してみては?

キンドルの電子書籍出版代行なら「パブフル」

おわりに

以上、ざっくりと、初心者の私がKindleで本を出したい経緯を書いてみた。繰り返しになるが、具体的な作業の進め方は『さるでもできるKindle電子出版』を買って読むのがいちばんいい。

作業を終えてみて感じるのは、KDPというものがまだまだ下火も下火だということ。アメリカで実施中のサービスが日本では未導入だったりするし、Kindleで本を読むという文化はほとんど浸透していない。Kindle作家でめだつ人というのも、私はまったく知らない。

だが、期待もしている。思い返してみると、Hikakinなどが出てくる前のYouTubeというのも、なんだかこんな雰囲気だった。特に有名な人もなく、ユーチューバーなんて概念もなく、微妙な動画があるだけのしょぼいサイト、それがYouTubeだった。だが、それが今では一大エンターテイメントに成長している。

ひょっとしたら、Kindle本にも、そんな時代がこの先訪れるかもしれない。そのとき、注目度を増したAmazonのKindleストアには、私の本がずらっと並んでいるわけである。ふふふふふ。