2017年、都議選では小池都知事率いる都民ファーストの会が圧勝を収めた。しかしその陰で「都民ファーストの会」ならぬ「区民ファーストの会」や「国民ファーストの会」が誕生していたことはあまり知られていない。また、都議選のあとには大阪で「市民ファーストの会」なるものが組織され、小池知事の右腕である若狭勝衆議院議員は「日本ファーストの会」を立ち上げた。
はたして、それら○○ファーストの会とはどんな団体なのか? 元祖となる都民ファーストの会、あるいは小池都知事との関係性はあるのか? 乱立する「ファーストの会」を整理してみた。
元祖は都民ファーストの会
もちろん、○○ファーストの会の元祖、最初はこの都民ファーストの会だ。今年7月2日の都議選では都民ファーストの会が全127議席中55議席を獲得。選挙協力した公明党の23議席と合わせると78議席となり、余裕で過半数64のラインを超えたのだった。
この地域政党のもととなったのは、小池都知事が主宰した政治塾「希望の塾」である。また、イメージカラーは針葉樹林のような濃い緑色。ポスターもこの緑を基調とした色使いがなされている。
現在、小池百合子都知事は都民ファーストの会の代表は退き、特別顧問というかたちになっている。
区民ファーストの会
小池旋風が吹き荒れ、都民ファーストに票がどこどことなだれ込んでいるまさにそのとき、実は都議選に区民ファーストの会という政治団体の候補者が立候補していたのをご存知だろうか?
区民ファーストの会として立候補したのは、葛飾区の谷野正志朗。ホームページを見るとトップに小池都知事とのツーショット写真が掲げられ、全体的に緑色を基調としたサイトとなっている。強調文字も緑色だ。
区民ファーストの会というと、都民ファーストの会の下位組織かな、と思わされるが、実はそうではない。まったく別の政治団体である。公式ホームページにはこう書かれている。
2016年都知事選では小池百合子氏を強力に応援。
しかしながら、都知事が党首を務める政党から都議会議員選挙に立候補することは、
二元代表制の在り方に反するとの信念から、区民ファーストの会を立ち上げる。
と、小池都知事の政党から出るのは違う、ということで別の団体を立ち上げ、そこから出馬したとのこと。しかし、その割には名前が都民ファに似ているし、サイトで「有権者ファースト」「高齢者ファースト」など、ファーストを多用しており、そちらに寄せているようにしか見えない。
だが、この谷野氏、もともと葛飾区議会議長を務めたほどの人物であり、自民党員としての活動歴も長い。なのに、先の選挙では葛飾区候補者8人中7位と惨敗してしまった。
国民ファーストの会
葛飾区ではそんなことがあったが、一方、千代田区には国民ファーストの会という政治団体ができていた。代表は後藤輝樹。

いや、ちがう。それは後藤輝基(ごとう てるもと)だ。こちらは後藤輝樹(ごとう てるき)といって、数年来いろいろな選挙に出ている変わった青年である。めだっていたのは去年の都知事選挙で、NHKの政見放送で下ネタを連発して一部ネットで騒がれていた(ちなみに政見放送というのは何を言ってもいいらしい)。
もちろん、この国民ファーストの会は都民ファーストとは何の関係もない。
だが、後藤氏としては都民ファーストの会がいずれ国政へと乗り出すことを見越したうえで、国民ファーストの会という名称を使用したようだ。たしかに、都民ファーストが国政へ乗り出すなら、「都民」が「国民」になるだろうというのはしごく自然な流れ。それを読んで、先回りしてこの政治団体を作った。
だが、都議選の結果はこちらも惨敗。トップ当選の樋口高顕(都民ファースト、34歳)が14,418票を取っているのに対し、後藤氏はわずか602票。政治団体の名前を似せても、結果は伴わないらしい。
市民ファーストの会
以上2つは都議選のときにできた政治団体だが、こちらはそのあとにできた会だ。場所も東京ではなく大阪である。大澤千恵子氏をはじめ数人のメンバーがおり、摂津市にできた政治団体だ。
こちらはパチモンではなく、小池都知事との繋がりが実際にあるらしい。詳しいことはまだ分からないが、どうやら小池都知事が作る国政政党の布石のようなもの……らしい。「らしい」ばかりで申し訳ないが、正確な情報はまだ出ていないので、言えるのはこの程度のことだ。
ただ、調べていくと、どうも「市民ファーストの会」はこの摂津市のものだけでなく、他の地域にもあるようなのだ。
こちらの小川氏は千葉県船橋市の方。見てみると小池都知事の「希望の塾」塾生とある。Amebaブログでポスターの画像の載ってる記事を見ると2017年6月5日とあるので、随分とはやい時期に立ち上げていたようだ。
日本ファーストの会
8月7日、小池都知事の右腕である若狭勝議員が代表となり、いよいよ日本ファーストの会を立ち上げた。まだ政治団体という扱いだが、いずれは国政政党となるであろう団体だ。
「都民ファースト」が国政をめざすのだから「国民ファースト」にすればよさそうなものだが、そうしなかったのは前出の後藤輝樹氏がすでにその名前を使っていたから。後藤氏の国民ファーストの会はただの政治団体なので、あとから同じ名前の政党を作っても法律上は許可されるらしいのだが、やはり同じ名前は避けたかったようだ。
だが、「日本ファースト」にも若干の問題があり、実はあのドクター中松氏がすでに、「日本ファースト」を商標申請している。ということは、日本ファーストという商標を使いたい場合には、ドクター中松氏に使用料を支払わなければならない可能性がある。
「先に取っちゃうなんてズルい!」と思われるかもしれないが、基本、商標や名称というのは早い者勝ちなので、どうしようもない。というか、「都民ファーストの会」を作った段階で予測し、対処しておくべきだった。
こうなってくると、もはや「国民ファーストの会」も「日本ファーストの会」もやめて、まったく別の名前にしてはどうかと思ってしまう。どのみち小池都知事の求心力が最大の武器なので、「○○ファースト」にこだわる必要がそこまであるのか、と疑問になる。
○○ファーストの会を利用すべし
以上のように、○○ファーストの会というのはたくさん存在しているわけだが、まだまだバリエーションは考えられる。
- 県民ファーストの会
- 道民ファーストの会
- 府民ファーストの会
- 町民ファーストの会
- 村民ファーストの会
- 地域ファーストの会
- アジア・ファーストの会
- 地球ファーストの会
概念をずらしてもいい。
- 女性ファーストの会
- レディー・ファーストの会
- 環境ファーストの会
- 国益ファーストの会
- 健康ファーストの会
- 安全ファーストの会
- 労働者ファーストの会
- 福祉ファーストの会
- 若者ファーストの会
- 子育てファーストの会
- 家族ファーストの会
- 教育ファーストの会
- 平和ファーストの会
いくらでも○○ファーストの会は考えることができる。
もしこれから選挙に出るという方がいらっしゃれば、上記のような名前を使われるといい。無所属よりはきっと目を引くだろう。