一人暮らしをする人間にとっての2大災厄といえばNHKの集金人とエホバの証人である。NHKは金銭的なマイナスが発生するという面で厄介だが、一方、エホバの証人は正体がよく分からないだけになんだか怖いし不安が募る。そこで、エホバの証人とは何なのかを調べてみた。
エホバの証人とは?
エホバの証人(Jehova’s Witnesses)はキリスト教系の宗教であり、全世界に信者が820万人、日本には21万人いるという。特徴的なのは二人一組で行動するという布教の様式。これは男同士、女同士のこともあれば、男女でということもある。徒歩で一軒一軒の家をまわり、パンフレットや聖書を配り歩いている。女性の場合は日傘、つばの広い帽子、地味なスカートといういで立ちが一般的だ。

エホバの証人はキリスト教の一派ではあるのだが、基本的な信仰では主流派と異なる部分もある。たとえば、「神と精霊とキリストは同一のもの」という三位一体説を否定していたり、現代の世界は悪魔サタンの支配下にあるとしていたりする。
この「サタンの支配」というのは証人のあいだでかなり浸透している考え方らしく、巨大地震や戦争など、大きな厄災が生じるとすべて、サタンの仕業と捉えられるらしい。また、私たち世俗の人間はみなサタンに惑わされた存在である。
サタンと関連し、もう一つ大事なのはハルマゲドンだ。ハルマゲドンとは、新約聖書の『黙示録』に書かれている、世界の終わりである。そのときにはサタンの支配する世界が滅ぼされ、神の王国が、イエスの支配する王国がこの世に誕生する。そのとき、エホバの証人たちは新しい楽園へと入り、私たち一般人は身心ともに滅ぶこととなる。恐ろしいことである。
どんな戒律がある?
エホバの証人を特徴づけるのはその戒律だ。現在、欧米で主流となっているカトリック、プロテスタントにはこれといった戒律はなさそうだ。キリスト教徒とは言っても、毎日必ずお祈りをしているとか、何か食べてはいけないものがあるとか、そういった話はあまり聞かない。
一方、エホバの証人にはこんな戒律がある。
- 輸血拒否
- 偶像崇拝禁止(十字架やマリア像も)
- 兵役拒否
- 格闘技・武器使用禁止
- 他の宗教の冠婚葬祭には出席できない
- クリスマスやハロウィン、自身の誕生日も祝ってはいけない
- 国旗敬礼・国歌斉唱禁止
- 喫煙、医療目的以外の麻薬・薬物の使用禁止
- マスターベーション、婚前交渉禁止
ご覧のようにかなり厳しい。仏教式の葬式にも参加できなければたばこも辞めなければならず、空手や合気道もできないということだ。私にはとうてい入れそうもない。
もしエホバの証人になったら、実際に角が立つのは親族の葬式に出られないという部分だろう。墓参りすらしてはいけない。となると、家族や親せきとの関係性がギクシャクしてきそうだ。
キリスト教の一派なのに、イエスの誕生日であるクリスマスを祝ってはいけないというのは不思議だが、実は12月25日のクリスマスはもともと別の宗教の祝日であったらしく、いわば邪教の流れを汲んでいるからだめとのこと。ある意味、カトリックやプロテスタントより厳密である。
ちなみに、日本人はよくいろんな宗教のイベントを取り入れるから宗教的に節操がないと言われる。だが、キリスト教圏で祝われているイベントもよくよく調べるとキリスト教ではなく、土着の宗教・民族のお祭りが起源であったりする。どっちもどっちである。
輸血の拒否に関しては有名な凡例がある。とあるエホバの証人の信者が手術を受けるとき、医者に「輸血はするな」と意思表示をしていたのにされてしまい、医者を訴えたという事件である。結局、最高裁までもつれ込み、原告の信者側が勝った。信教の自由が保障されている中で、妥当な判決だろう。
とはいえ、現在ではこの輸血禁止というルールも若干ゆるくなり、成分の輸血はいいとか、微妙なことになっているようだ。そもそも輸血禁止というルールは聖書による根拠づけが弱いこともあり、やがて撤回されるかもしれない。
訪問の目的は?
エホバの証人が民家を訪問する目的、それは当然、布教である。公式サイトを見ると、これは初期クリスチャンにならった伝道活動だそうな。
私も過去数回、エホバの証人の訪問を受けたが、一度は薄い冊子を渡された。たしか、「ものみの塔」だったと思う。また、別のときには新約聖書の一部、福音書か何かの本を渡されそうになった。
「うちには新共同訳の分厚い聖書があるので結構です」
こう言って断ろうとすると、
「しかしこちらは読みやすいように縦書きで印刷してあるんです。本はたいてい縦書きなのに、聖書ってみんな横書きでしょう?」
「ハァ……」
しかし断って、あとで本棚に眠っていた新共同訳の聖書を見ると、はたして縦書きであった。というか、どの聖書もだいたい縦書きになっているような気がするのだが。
さて、公式サイトを見ると、「興味がないと言っているのにまた来るのはなぜですか?」という「よくある質問」に対し、このように回答されている。
「エホバの証人は,神と隣人への愛に動かされて,聖書のメッセージをすべての人に伝えています。それには,以前に「興味がありません」と答えた方も含まれます。」
これも聖書の記述に則ったもののようである。
勧誘を拒否する方法
エホバの証人の訪問を受けたら、たとえばこんな切り返し方が考えられる。
- 宗教には興味がない
- 私は仏教徒(その他宗教の信者)だ
- エホバの証人の教義には賛成できない
- ここの家の者ではない
- 今忙しいので帰ってくれ
だが、「これを言えばもう二度と来ない」という魔法のワードというのはないようである。他宗教の信者なら改宗させようとするだろうし、いま忙しいならまたあとで来ればいいと考える。
大事なのは、冊子や聖書などを受け取らないことだ。私は一度「ものみの塔」か何かを受け取ってしまい、そのあと散々訪問を受けたことがある。二度目以降はすべて居留守を使っていたが……。どうやら、何か受け取ってしまうと、「ここのヤツは行ける!」という認定をされるらしい。いわば見込み客としてマークされ、定期的にパンフレットを渡されて、やがて聖書研究会に誘われてしまう。
ベターなのは、来るたびに早々と帰ってもらうことである。
あまり長々とあちらのペースで話し込んでしまうと時間の無駄なので、エホバと判った時点ですぐ「けっこうです」とお帰り願うのがいいと思う。元信者の方が、エホバの断り方についてこのように書いている。
もし絶対に証人たちに家に来てほしくなければ、「訪問拒否にしてくれ」とキツイ態度で直接強く言うといい。すると区域カードに「訪問拒否」と記録される。すると一年は家にやってこない。
そもそもエホバの証人は上で書いたように格闘技や兵役まで拒否する平和的な人々であり、実害はない。きっぱり断っていればいいだけだ。
エホバの証人を恐れる必要はない
繰り返しになるが、エホバの証人が訪問してくるからと言って、別に恐れる必要はない。暴力・暴言を浴びせられることがないのはもちろん、霊感商法で物を売りつけてくるわけでもないし、強引な勧誘をしてくるわけでもない。強めに拒絶すれば、上の引用のように一年くらいは訪問してこない。
ネットを調べていると、必要以上にエホバの証人の訪問を恐れていたり、嫌っている人が多いのに気づく。だが、証人を論破する必要などないし、ましてこちらが暴力をふるったりしてはいけない。外部の人間として訪問してくる限り、エホバの証人は無害だ。来たら来たでその都度お帰り願うということを続けていれば、何の問題もない。
ただし、エホバの証人が無害なのはあくまで外部にいる場合である。もし自分の母親や配偶者がエホバに入信してしまった場合、かなり厄介なことになる。内部ではさまざまな世俗の事柄が「サタンの誘惑」とされているので、いろんなことを禁じられる恐れがある(ある種の映画や音楽やマンガ、飲み会のときの乾杯、たばこ、自由恋愛など)。そうならないよう、家族が引き込まれないようにだけ注意した方がいい。
エホバの証人の有名人
あまり聞かない話だが、エホバの証人にも各界の有名人が割といるらしい。が、某仏教系新興宗教と違い、エホバは有名人の信者を宣伝に利用したりはしない。なので、あまり情報が外に出てこない。先に引用した本の著者佐藤典雅さんが同書の中で明かしている有名人信者を紹介しておこう。
- マイケル・ジャクソン
- ジョージ・ベンソン
- プリンス
- ラリー・グラハム
- 臼井儀人
- 矢野顕子
世俗的な音楽は「サタンの誘惑だ」という態度を取ってる割には、ポップミュージックの王様がいたというのが驚きだ。が、いちばん意外なのは「クレヨンしんちゃん」の作者・臼井氏がメンバーだったというところ! あんなマンガ、普通の主婦の感覚でもアウトなのに、よく証人をしつつ描いていたものだ。
まとめ
以上、エホバの証人について概観してみた。教義に関しては、部外者にとって三位一体を信じるかどうかなどは内々の話なのでどうでもいいが、戒律の厳しさはかなり目を引くものがある。職場や家庭以外に居場所が欲しい方にとっては入信を検討してみるのもいいかもしれないが、親類友人の冠婚葬祭に出席できなくなるのはリスクがでかい。また、輸血禁止というのも、事故や手術のときに死ぬ可能性がグッと高まるので怖い。
それ以前に、私はたばこを吸っていてやめる気はないし、いずれ武道をたしなみたいと思っているので、入信はまず無理である。
とりあえず、訪問を受けたらなるべくきっぱりと拒否し、冊子などは受け取らず、また来たら断るということを繰り返しておけばよさそうだ。やや迷惑だが、実害はないので、対処法としてはそれで十分だろう。
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