パソコンやテレビ画面とはやっぱり違う、映画館の巨大なスクリーンと音響。真っ暗な中、眼前で繰り広げられる迫力満点の映像を堪能するのは無上の喜びだ。代わり映えしない日々が続く中で、手軽に非日常を味わわせてくれる。
そんな映画館に関してひとつ、前々から疑問に思っていることがある。それは、飲食物の持ち込みのこと。持ち込み禁止との注意を掲げる映画館が多いのだが、その理由は? ペットボトルの飲み物だけでもダメなのか?
そんな疑問について考えてみたい。
飲食物持ち込み禁止の映画館が多数
最近の映画は長く、おおむね2時間、長ければ3時間という作品もある。となると、どうしたって飲み物は用意しておきたい。映画館の売店で買うのがフツーなのだろうが、ここだけの話、私はよくペットボトルの飲み物を持ち込んでいる。
だが、実は映画館の多くは売店のもの以外は持ち込み禁止としているところが多いのだ。
TOHOシネマズのサイトを見ると、「映画を心地よくご鑑賞いただくための9つの法則」と題し、「他店からの飲食物の持込はご遠慮ください。」としている。

おそらく、イオンシネマやユナイテッド・シネマなど、シネコンなら同じだろう。どこも、外部からの飲食物の持込は禁止だ。
飲食物持込禁止の理由は?
気になるのはその理由である。なんで持込がダメなんだろう? TOHOシネマズで言えば「心地よくご鑑賞いただくため」となっているが、別に、他店の飲み物や持参の水筒を持ち込んでも、他のお客さんの迷惑にはならないはず……。
持込以外の禁止事項、例えば携帯電話の電源だとか、禁煙だとか、おしゃべりはやめてとか、そういうのはわかる。映画鑑賞の妨げになるから。
また、ポテトチップスやおせんべいのような音が出るもの、マックのハンバーガーやフライドチキンのような匂いの強いものが持ち込み禁止なのもわかる。そういうのは明らかに迷惑だから。
だが、こと飲み物に関しては何も問題がないように思える。においもなければ音もしない。スタバの飲み物なら見た目的にも売店のものとほぼ変わらない。ペットボトルなら持ち帰れるから、店側にはゴミ処理の手間もかからない。
こいつは、どう考えたって裏がある。はて、本当の理由は何だろう……?
真の理由は収益の問題

調べていくと、答えは案外単純だった。収益の問題、つまり、儲けの問題だ。映画館はポップコーンやドリンクを販売することで客単価をあげて儲けを増やしており、それらが売れなくなると困るのだ。
フードとドリンクのお値段はこちら。
- ドリンク:S 290円、M 360円、L 420円
- ポップコーン:360円
- ドリンクM+ポップコーンM:670円
- チュリトス:310円
- アイスクレープ:360円
- 生ビール:720円
- ワイン:470円
うん、確かに、いいお値段だ。ガールズデーだなんだで値引きをしても、多少飲み食いしてもらえれば収益率アップが期待できそう。
とりわけ、ポップコーンなんてトウモロコシを破裂させただけのものだから、いかにも原価は低そうだし。空気を売ってるようなもんだろう。
こういう事情があるのなら、飲食物の飲み込み禁止はまだ納得できる。

と、映画館はこうアナウンスすべきだったのだ。
Amazonで調べると業務用ポップコーン1kgが595円。で、映画館で売られてるポップコーンが100gほど。となると、原価は60円ほどと想像できる。
おそらく、原価率は10%程度だろう。
ペットボトルは許容範囲?

さて、とりあえず理由に納得はできたのだが、それでも諦めきれないのはペットボトルの持ち込みだ。確かに、売店で買わなくなれば映画館側にとって痛手。
しかし、ああいうところの飲み物は氷が多いのでしばらくすると溶けて薄くなる。表面には水滴がついて手が濡れる。あと何より、並んで買わなければいけない。それがめんどくさい。
さらに、ペットボトルならカバンに入れて持ち込むのは簡単だし、暗くなってしまえば他の人にはまずわからない。店側にもバレるはずがない。スタッフが赤外線監視カメラで客席を隈なくチェックしていたらバレるだろうが、まさかそんなことをしているはずもない。
実際、映画館でバイトをしていた人もネット上に実態を書き込んでおり、大体が「許容範囲」「ペットボトルなら気にしない」といったおおらかな意見が多いのだ。
ペットボトルくらい、多めに見てはもらえないだろうか……?
ぐうの音も出ない理屈
しかし、こう言われるともう、私にはなすすべがない。

あなた、レストランにペットボトルの飲み物を持ち込む? 他の人に迷惑がかかってないからって、お店で買ったもの以外を飲み食いする?
それって非常識よ。大人としてどうかと思うわ。
こう詰め寄られれば、私はこうべを垂れ、「すみません」と呟くしかない。
心地よさと不自由さ
以上、映画館への飲食物の持ち込みについて考えてみた。ドリンク類の持ち込みについては、どうやら心地よさやマナーというのは建前で、実際には売り上げ確保のためという理由が大きいらしい。
それにしても、今の映画館というのはルールが多い。マナーにうるさい。聞いた話では、昔は一回分の料金を払えば何本でも映画が見られたというし、タバコも吸い放題だったというではないか。携帯電話はまだなかった時代の話だ。
その当時に比べると、確かに静かで空気が綺麗で、心地よくはなったのだろうが、不自由さが増してちょっと息苦しいような気もする。
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