いまや映画館の雄に躍り出た感のあるアメコミ映画。毎年数本の超大作が劇場公開され、次々にヒットを成し遂げている。中でも大人気なのは、アイアンマンやキャプテン・アメリカを擁するマーベル映画だ。
このマーベル映画、興行収入や一般的な人気でのランキングもあるが、ここでは私の超個人的な視点で順位付けをしてみたい。「そうだよね、やっぱり!」と共感していただいてもいいし、まだ未見の方は「なるほど、そうなんだ」と、今後の映画観賞の参考にしていただければ幸いである。
マーベル映画・MCU作品ってどんなもの?
まず、あまり知らない人のためにちょっとだけ説明しておこう。マーベル映画とは、アメコミ・ヒーロー物の連作映画である。スーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンなどがあるDCコミックと双璧をなすコミック、それがマーベルだ。
このマーベルはMCU、すなわちマーベル・シネマティック・ユニバースとも言われ、ひとつの独立した世界観を形成している。だから、アイアンマンやスパイダーマンと出会うし、ハルクとマイティ・ソーは宇宙で再会したりする。
彼らはキャプテン・アメリカとアイアンマンを中心にしてアベンジャーズという組織を結成しており、悪い敵と戦ったり、仲間割れをしたりしている。
公開済みのマーベル映画全17作品一覧
いわゆるマーベル映画と言われる作品は、2017年までで全17作品公開されている(過去のスパイダーマンやX-メンは別)。まずは公開順に並べておこう。
【主要キャラの単体作品とアベンジャーズへの結集】
- アイアンマン(2008)
- インクレディブル・ハルク(2008)
- アイアンマン2(2010)
- マイティ・ソー(2011)
- キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011)
- アベンジャーズ(2012)
【アベンジャーズの発展とクロスオーバー】
- アイアンマン3(2013)
- マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)
- キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)
- アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)
- アントマン(2015)
【アベンジャーズの内部分裂と同時多発的な物語】
- シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)
- ドクター・ストレンジ(2017)
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー;リミックス(2017)
- スパイダーマン:ホームカミング(2017)
- マイティー・ソー バトルロイヤル(2017)
すごい数だ。特に今年2017年は4本も公開されている。なんて幸せな年だったのだ!
まあ、それはいいとして、これら17本全部を見た上で、ランキングを作成していこう。
マーベル映画の私的ランキング【ベスト5】
興行成績? 関係ねぇ! 観客動員数? どうでもいいっ! というわけで、以下は私の独断と偏見のみに基づくマーベル映画・MCU作品のランキングである。
1位:アイアンマン3
マーベル1番人気、アイアンマン・シリーズの3作目が私的にはベストだ。5回は観てる。
序盤、パーツごとにバラバラのセパレート・タイプとして製造されたアイアンマン・スーツ、マーク42がジングルベルの曲に合わせてトニー・スターク(主人公)にばちんばちんとハマっていく(装着されていく)シーンは最高っ!
あんな高性能でパワフルなスーツが、パーツごとにセパレートされている……。確かに、初見のときは「んなバカな。荒唐無稽すぎ」と思ったものだが、何度か見るうちにそんなことは気にならなくなった。むしろ、それがいい。そこがいい。
主人公トニーの恋人であるペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)も美しい。ヒロインというには若干年齢が行ってるような気もするが、知的で上品な雰囲気があり魅力的である。
2位:アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
アベンジャーズ2作目。トニー(アイアンマン)のせいで人工知能のウルトロンが暴走してしまい、世界が滅ぼされるかも、という作品。
マーベル作品は敵のキャラクターがあまり魅力的でないことが多いのだが、このウルトロンは、私は好きだった。ユーモラスな部分もありつつ、ちょっとした切なさもある。
この映画を見たあとは、つい、ウルトロンが序盤に口ずさんでいた「自由ってやつは、楽しいもんだぜ」というピノキオの歌が脳内にこだましてしまう。人格と意志を持ってしまった人工知能、AIの悲哀を感じる。
また、この作品の後半では全身真っ赤な奴が登場する。そいつは全身真っ赤っかで、特に根拠もなく、宙に浮く。壁もすり抜ける。おでこからビームも出る。「こんなの実写でアリなの!?」というキャラがありになった点でも面白い作品だ。
3位:マイティー・ソー バトルロイヤル
まさかのマイティー・ソーがランクイン。「最近観たからじゃないの?」との疑いをかけられそうだが、違う。これは本当に面白い。
マイティー・ソーはギリシャ神話の世界観にいる人物だ。パワーは強大で、1作目2作目は物語のスケールが大きかった。だが、どちらかというと社会派の要素がつよいマーベル・シリーズの中では浮いており、あまり好きじゃなかった。
が、3作目でガラリと評価が変わった。この「バトルロイヤル」では主人公ソーはあんまり強すぎず、作品のトーンも完全に変わって、全編コメディになった。ほとんどギャグの連続だ。なのに、クライマックスはしっかりかっこいい!
なお、この作品で初登場となるスクラッパー142(別名ヴァルキリー)がかわいい。
4位:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
アベンジャーズの面々が2つの陣営に分かれて戦う話。一言でいえば、そういう映画だ。
シビル・ウォーとは、アメリカの南北戦争のことだ。これは奴隷制の是非をめぐってアメリカ人同士が戦ったものだが、この映画での対立は、アベンジャーズという組織を法で縛るかどうか、という部分。
アイアンマンはアベンジャーズを国連の管理下に置くべきとするが、キャプテン・アメリカは組織を自由にしておくべきだとする。どちらの主張にも理がある。
けれどまあ、イデオロギーはいいとして、とにかくスーパーヒーローが2つの陣営に分かれてドンパチやるというのが超絶楽しい。アントマンやスパイダーマンまで加わって、もうパーティーである。
5位:アイアンマン
マーベル・シネマティック・ユニバースの口火を切った作品。大好きなアイアンマン1作目だ。
主人公トニーは武器会社の二代目社長。基本的には鼻持ちならない奴だ。だが、中東でテロリストに拉致されたのをきっかけに目覚める。それまで武器の製造をしていた事業を、ガラリと転換させる(という話だった気がする)。
これ以降のマーベル映画では、アイアンマンは「とにかくすごいハイテクスーツを駆使して戦う超人」という感じで、これが前提となっていくのだが、このアイアンマン第1作は普通の金持ち兼エンジニアがゼロからスーツを作り、スーパーヒーローになっていく様が描かれている。
たとえば、アイアンマンは自由自在に空を飛ぶが、この作品では飛行に失敗する様子も描かれていて、主人公の試行錯誤を見ることができる。
マーベル映画の私的ランキング【ワースト5】
次はワーストだ。面白くなかった方もランキングしていこう。といっても、基本的にマーベルの映画はみんな面白い。本当にダメなクソ映画というのはない。なので、以下は「比較的」だめだった作品だとご理解いただきたい。
1位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー;リミックス
これはかなり退屈だった。
1作目のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは面白かったのだが、続編となるこちらはだめだった。とある人物が実は悪い奴で……という展開も割と序盤から透けて見えてしまってワクワクできなかった。
主人公はそこらのガラの悪い兄ちゃん(スター・ウォーズでいうハンソロみたいな)だと思ってたのに、実は全然違うし、なんだか興ざめ。
唯一の見せ場は、主人公の育ての親であるヨンドゥが矢で無双するところ。……だがそこも、少し前まで部下だった奴らを殺してるので「どうなの?」と思ってしまう。
2位:アントマン
劇場で見て、レンタルでも見た。そして、2回とも途中で眠ってしまった。
自由自在に小さくなり、蟻を使役できるアントマン。主人公は修士号を持ってるのにコソ泥へと転落した男。基本設定は嫌いじゃないが、入り込めなかった。
アイアンマンのスーツはまだリアリティがあり、科学技術の進歩によっては実現できるかもと思えるのだが、このアントマンの場合、薬品か何かの作用で物質が小さくなるというのだが、ここが飲み込めない。
「小さくなる」というのは原子・分子自体が小さくなるのか、密度が高くなるのか、謎である。あと、小さくなった場合、質量はそのままなのか軽くなるのか、そのへんの設定も曖昧だ(ここは製作陣も諦めたんだろう)。
3位:アイアンマン2
「アイアンマンは2だけ駄作」というのは、もうけっこう定まった評価だと思う。実際、これだけ面白くない。
アイアンスーツはかっこいいし、敵も悪くないのだが、なんだかつまらない。たぶん、シナリオに問題がある。主人公の抱えてる最大の問題は胸のアークリアクターに起因する健康問題なのだが、そんなの感情移入できないし、もう一つの問題とリンクしていない。
ただ、「あの面白いアイアンマン・シリーズなのに!」という前提での低評価なので、見れないほどではない。
4位:ドクター・ストレンジ
元エリートの医者が交通事故で大怪我を負い、そこから復活しようとして、結局魔法使いになるという話。だったと思う。
これはレンタルで見たのだが、画面が万華鏡のように移り変わるため、途中でストリーミングが止まってしまってストレスばりばりだった。劇場で見ていたらちょっと違ったのかもしれないが……にしても、どうだろう?
この作品では魔術というものが存在する前提になっている。が、そこが受け入れがたい。そもそも、魔法の世界というものに自分は入っていけない。ハリー・ポッターも、みじんも面白いと思えなかった口だ。
相性が悪いのかもしれない。
5位:スパイダーマン:ホームカミング
全身タイツで壁や天井に張り付き、手首から糸を出す男は好きじゃない。以上。
……で終わろうかとも思ったが、もう少し説明すると、この映画は完全に学園ものだ。15歳の少年の青春物語。スクール・カースト下位の主人公が、でも実はみんなのヒーロースパイダーマンで、それを片思いのあの娘に言っちゃおうかな、やめとこうかな、という話。
その青春……というか、青春未満なテーマにあまり感情移入できないし、好きだったトニー・スタークがちょっとウザいおやじになっていたりして、あまり好きじゃなかった。薄いタイツのスーツにハイテクな機能が付いてるというのもリアリティとして微妙。
私的ランキングのまとめ
ベストの方は「マイティー・ソー バトルロイヤル」を除き、すべてアイアンマンが主人公か、もしくは主要なキャラクターとして登場する作品となった。彼はユーモアがあるし、金持ちだし、それでいてDIY(Do It Yourself)の人だし、やっぱり憧れる。
他方、ワーストは「アイアンマン2」を除き、マーベルの主流から外れる作品が目立った。すでにして、私はちょっと保守的になっているのかも?
ともあれ、最初にことわったように、ワーストの方の作品も決してそんなに悪くない。映画全体の中で見れば、むしろ良作が多いので、見て損はないと思う。
マーベル映画の魅力とは? 3つの私的見解
それにしても、なぜマーベルの映画はこんなに面白いのか? 最初に見たのは「アベンジャーズ」だったと思うが、まさかここまでハマるとは予想だにしていなかった。
以下、マーベル映画が面白い理由を3つ挙げてみよう。
1)SF・ファンタジーと社会派要素の融合
これは絶対にあると思う。SFやファンタジーというと、現実的な社会問題とはまったく関連していない作品が多い。だが、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」はアメリカ政府による国民の監視という現実的・社会的な問題が取り入れられているし、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でも、テーマとなっているのはアベンジャーズという実力組織を政治的にどう扱うかという問題だ。
単に超人的な能力を持つスーパーヒーローたちが悪をやっつけて終わりではなく、作品の中にはちゃんと普通の生活を送る市民たちがいる。社会がある。その中でのヒーローたちの葛藤がある。そこがいい。
2)秀逸な飛行の表現
マーベルの映画ではキャラクターたちがよく空を飛ぶ。アイアンマン、マイティ・ソー、ファルコンなど。その飛行の表現が秀逸だ。
白眉はやはり、アイアンマン第一作で主人公トニーがおっかなびっくり飛行練習をし、そのあと夜空で勢いよく飛び出していくシーンだろう。あそこは実に爽快! 本当に「空を飛べたっ!」という感覚を味わえる。
他の映画だと、飛行シーンにリアリティがない場合が多い。猛スピードで飛んでるはずなのに髪の毛が乱れてなかったり、服があまりはためいてなかったり。飛ぶことに思い入れがないんだろうとガッカリすることが頻繁にある。
だが、アイアンマンの飛び方は秀逸だ。全身が金属で覆われているから、風を受けての状態を考えなくていいというのもあるが、飛び方に本物の浮遊感がある。着地も、金属の重さが音で表現されていていい。
3)世界観の広がり
これは言わずもがなだが、キャラクターと世界観を共有した作品が現状だけで17本もあるわけで、世界観の広がりがすごい。「マーベル・シネマティック・ユニバース」だなんて大げさなようだが、やっぱり一つの宇宙を形成している。
キャラクターの内面も能力も、ときには髪型や服装も変化していくし、関係性も変わっていく。ある作品で失敗した人物が、次の作品ではそれを踏まえて成長してたりする。こんなシリーズ映画、これまであっただろうか? たぶん、ない。
この先もまだ、ブラックパンサーという新キャラクターの独立した作品が作られるし、アベンジャーズのシリーズが続いていく。これほどの傑作群をリアルタイムで劇場で見られるなんて、とんでもない幸運だ。
なお、先ごろ「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の予告編が公開された。これもめちゃくちゃ期待大である。
最後に
マーベル映画私的ランキングについては途中でまとめたので、もう言うことは特にない。
しかし、一つ最後に言うとすれば、まだマーベル映画を見ていない人は絶対に見た方がいいということ。「2、3本見ただけ」とか、「まだ全部は見てない」という不届き者は、必ず全部見るように。
ちなみに、マーベル映画はすべてU-NEXTで視聴できる。導入に最適な「アイアンマン」や「インクレディブル・ハルク」あたりは見放題となっている。31日間は無料で使えるので、1ヶ月のあいだに可能な限りマーベル映画を視聴しよう。