これであなたも映画通! 映画批評の用語13個を解説【用例付き】

映画批評

映画通というのはとかく特殊な専門用語を使いたがるものだ。一般人には通じないさまざまな言葉をならべたて、いっぱしの評論家を気取りたがる。近くにいると、若干鬱陶しい。

しかし、そういう用語も一応知っておくと映画批評などを読んだり聞いたりしたときに役に立つ。あるいは、あなたが何かの間違いで「映画通を気取りたい!」なんて思ったとき、自然にそういう言葉が出てくると周囲はそれっぽいと感じるだろう。

ここでは、絶妙にこなれた映画批評の用語を解説しよう。

映画通を気取れる専門用語13選

映画好きを自称するなら、それ相応の言葉を使わなければいけない。素人が使うような当たり前の言葉で映画を語ったんじゃ、恰好がつかないというもの。きみの隣のその女の子も、ありきたりな言葉で今見た映画の感想をつぶやいていたんじゃ、乙女心がときめかないってもんだ。

そこで、きみが映画通……いや、「シネフィル」を気取れるための言葉をご紹介しよう。

シネフィル

そう、これがすでに専門用語である。「シネ」はもちろんシネマ、「フィル」は愛するという意味の言葉だ。それをくっつけたシネフィルは映画通とか映画狂い、つまり、映画キチガイという意味になる。たまに、年間200本とか映画を見ている人間がいるが、そういう奴がシネフィルだ。

しかし、普通の人間は映画なんか年間10本見ればいい方だろうから、なかなか過去の名作をチェックしたり最新作を軒並みチェックするなんてことは難しいはず。それでもシネフィルを気取れるよう、とりあえず以下の用語を身に着け、自然に口に出せるようにして欲しい。

ちなみに、好きな監督はクエンティン・タランティーノ、中でも『パルプフィクション』がいいと言っておくと、シネフィル感がぐぐっとアップする。

映画通
タランティーノ監督ももともとはビデオショップの店員で、よくいるシネフィルだったんだ。けど、その下積み時代に観た映画が監督になってからの作品に活かされてるんだよ。たとえば『パルプフィクション』ではね……

フィルモグラフィー

これはある監督や俳優、脚本家などが携わった映画の歴史、あるいは履歴書というような意味だ。「フィルモ」はもちろんフィルム、「グラフィー」は「書かれたもの」を意味するギリシャ語らしい。

映画通のふりをしたければ、作品ごとの良しあしとかではなく、監督や俳優に焦点を当てるといい。前作のあの部分は、最新作のここで引き継がれている、といったような、点ではなく線で捉える語り方をすると、シネフィルっぽくなる。そのとき、さりげなくフィルモグラフィーという言葉を差しはさんでみよう。

映画通
あの作品は興行収入もかなり大きくて、監督の代表作のように言われているけど、実は彼のフィルモグラフィーの中で見るとむしろ特殊なテーマを扱っているんだよ。

オマージュ

これはご存知の方も多いだろう。過去の名作や先行作品と同じような設定・構図・ストーリーなどを取り入れることだ。それは決してパクリではなく、オマージュなのである。偉大な作品に対し、作品内で尊敬の念を表明しているのだ。パクリではない。

じゃあパロディとオマージュはどう違うのかと疑問に思われるかもしれないが、あまり深く考える必要はない。もしだれかに聞かれたら、用事を思い出して家に帰ってしまおう。

また、オマージュされる作品としては『2001年宇宙の旅』『ローマの休日』『タクシードライバー』などが多い。

映画通
映画の中で主人公とヒロインが原付で二人乗りしていたでしょ? あれはオードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』へのオマージュなんだよ。

リブート

一言でいえば、既存作品の仕切り直しということだ。前もあったけど、同じ作品をもう一回、キャストやら何やらを一新してやり直す、ということ。代表的なところで言うと『スパイダーマン』とか『バットマン』がある。アメコミ・アクション映画に多い印象だ。

問題は「リメイク」とどう違うかだが、よく分からない。とあるサイトには「単発での作り直しがリメイク、シリーズ化を見越したものがリブート」とあったが、果たしてどうなのか。2016年の『ゴーストバスターズ』は明らかに単発だが、リブートと言われたりもするので、まあ、厳密な使い分けはなさそうだ。リブートの方がかっこいいから、なるべくこっちを使おう。

映画通
ハリウッド映画は昔の大ヒット作のリブートが多いけど、やっぱりある程度のヒットが保証されているから作りやすいんだよね。

プロット

物語の筋、脚本のことだ。「ストーリー」とか「物語」と言うより、プロットと言った方がそれっぽい感じが出る。映画のお話の流れをちゃんと理解している、という雰囲気を醸し出すことができる。

映像や演技についてはよく分からないという方でも、プロットのよさや粗さは割と見つけやすいので、ぜひ日常的に使いたい用語だ。

映画通
映像はきれいだし俳優の演技もよかったんだけど、プロットに難があったね。いくつか回収されない伏線があったからなぁ。

バジェット

映画制作にかかった予算のこと。監督や脚本、映像も越えて、製作費のことまで言えるようになれば相当な映画通っぽさが出てくる。ソニーだのワーナーだの、そういう会社名まで出てくればなおかっこいい。ちなみに、私はその方面のことはまるっきり分からない。

映画通
ハリウッドのビッグバジェット映画じゃないといいものが作れないなんてことはないと思うんだよ。バジェットのせいにしてる日本の映画監督はどうしようもないね。

ヴィラン

映画に出てくる敵のこと。悪い奴のこと。なぜか最近はそれをヴィランと横文字で言う。『ダークナイト』のヴィランはジョーカーで、『アベンジャーズ』のヴィランはロキである。アメコミ映画を語るときによく使われる言葉だ。『天空の城のラピュタ』のヴィランはムスカ大佐……だと思うけど、あんまりしっくりこない。

敵はヴィラン。じゃあ、主人公は横文字でどう言うのかというと……作品によってはヒーローとも言うが、主人公は日本語で主人公ということが多い。敵も、別にヴィランとか言わなくていいだろ、と思う。

映画通
今回の作品は新しい映像表現もあったし主人公たちも魅力的だったけど、ヴィランの魅力がいまひとつだったね。

ファムファタル

主人公を誘惑したり破滅させたりする魔性の女。正体が分からず、謎めいていて、何かを企んでいそうで、もちろん性的な魅力に満ちており、主人公を苦境へと陥れる、そういう女をファムファタールという。フランス語らしい。

そういうキャラクターが出てくる作品は限定されるが、まあ、たまにいる。映画じゃないけど、谷崎潤一郎の『痴人の愛』に出てきたナオミという少女もファムファタルだ。

私はよくファムファタルとマタハリを混同してよく分からなくなるが、マタハリは実在した女スパイの名前で、女スパイの代名詞として使われる。

映画通
まだあどけない少女のように見えたけど、まさかあの子がファムファタルとして主人公を誘惑するとはね。

三幕構成

ハリウッド脚本術の用語。ハリウッド映画の脚本にはいろいろなノウハウがあるのだけれど、その中でもっとも有名な概念がこれ。映画一本は3つの部分に分けることができて、それぞれに役割があるというのだ。シド・フィールドという人が考えた。

先ほど述べたプロットという言葉と合わせ、映画のストーリーを批評するときに使える。

映画通
やっぱりハリウッドの映画はしっかり三幕構成を守って作られているから、安心して楽しめるよね。

エクス・マキナ

デウス・エクス・マキナともいう。本来はラテン語で「機械仕掛けの神様」の意味。物々しい言葉だが、要はご都合主義的に、強引に物語を終わらせるような展開のこと。風呂敷を広げすぎてどうにもならなくなったとき、エクス・マキナが幕引きをしてくれるのだ。全部夢だった、とか。

最近はエクス・マキナというと、2015年の映画『エクス・マキナ』のことを指す場合もあるので、注意しよう。

映画通
あれだけいろんな伏線が張られて、どうやって風呂敷をたたむんだろうと思ったらエクス・マキナに頼っちゃってがっかりしたよ。

マクガフィン

映画の中で主人公と敵が奪い合う、何か重要なもの。たとえば秘密兵器の設計図、とても貴重な宝石、機密書類など。みんながその大事なものを追いかけるので、物語の推進力として役立つ。けど、実は他のものであったとしても構わない。交換可能なものだ。

「交換可能」なんて言われると途端によく分からなくなり、じゃあアレはマクガフィンなのか、コレは違うのかと混乱するが、そこらへんは大雑把に捉えておこう。とにかく、作中の人物たちにとってきわめて重要なもので、それをめぐって話が展開するものがマクガフィンだ。

映画通
結局あのアタッシュケースの中身は何だったのか分からないけど、別にそれでいいんだ。あれはマクガフィンだからね。

フード理論

いきなりマイナーな用語になってしまい申し訳ないが、ライムスターの宇多丸さん(映画批評で有名なラッパー)がよく言及するのでここに入れておこう。

フード理論とは、映画の中の食べ物の描写、食事の描写に関する理論である。たとえば、主人公や善のキャラクターは食べ物を大事に扱ったりおいしそうに食べたりする。逆に、謎めいたキャラクターは食べ物を食べない。悪い奴は食べものを粗末に扱う。こういった食べ物による人物描写のことをフード理論という。提唱者は福田里香さんで、『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』という本が出典だ。

たしかに、食べ物というのは人物の描写をする上で重要な役割を果たしている。これを意識して映画を見ると、さらに登場人物たちへの理解が深まるかもしれない。

映画通
あのヴィランはなぞめいたキャラクター設定のはずなのにりんごを食べていただろ? あれは福田里香先生のフード理論からするとよろしくないなぁ。

記号的表現

これもどの程度通じる言葉なのかいまいち分からないが、便利な言い方である。記号的表現として代表的なのはマンガだ。たとえばマンガでキャラクターの頭に「U」という記号があれば、これは汗の表現であり、そのキャラクターが焦ったり不安になったりしているという意味になる(空中に「U」が飛び出てる場合もよくある)。頭上に電球が出ていれば、何か閃いたということだ。

映画にもときおり記号的表現があり、複雑な演出や演技を使わずに主人公の状態や場の空気を伝えることがあるのだ。

だが、映画批評のときに「記号的表現」と言った場合、これは100%ダメ出しの言葉として使われる。「あれは記号的表現だ」というのは、説得力のあるストーリー展開だったりキャラクター造形ができていないのに強引に観客を納得させようとしている、という非難の言葉である。

映画通
キャラクターを掘り下げずに記号的表現に頼って話を進めようとするのは、最近の日本映画の悪い癖だね。

映画は楽しく観られればいい

以上、映画批評でよく使われる13個の用語をご紹介した。これらを自然に使いこなして映画のことを語れたなら、あなたもいっぱしの映画通に見えるはず。隣の彼女も「あらヤダ。彼ったら、映画に詳しいのね!」とときめくこと間違いなしである。次の瞬間には二の腕にやわらかいものの感触を感じるはずだ。

ただ、いろいろな言葉をご紹介したが、ぶっちゃけこういう専門用語をさもしたり顔で使うのは、私はあまり好きではない。結局、映画は好きなものを好きなように観て、それで「おもしろかった」と思えばいいのだ。うん、「おもしろかった」だけでいいよ。